タービン発電機の検査時間を半減、東芝が新型ロボット開発蓄電・発電機器

東芝エネルギーシステムズは新しいタービン発電機向けの検査ロボットを開発。従来の回転子と固定子の詳細点検が、従来手法の約半分の時間で行えるという。

» 2018年07月11日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 東芝エネルギーシステムズは2018年7月、タービン発電機の検査を短期間で実施するロボットを開発したと発表した。同ロボットは従来のロボット技術では難しかった、機内通風整流化のために固定子に設置された壁であるバッフル付き発電機の点検に対応。回転子を引き抜くことなく、一般的な精密点検期間の約半分の12日程度(発電機分解と組み立て期間含む)で発電機内の回転子(ローター)と固定子(ステーター)の詳細点検が可能となる。2019年4月の点検サービス開始を目指し、今後、実機での試運転を行う予定だ。

 従来の発電機精密点検は、4年ごとに専門検査員が実施していた。期間は約1カ月必要で、発電機の稼働率向上のためには、点検期間の短縮と点検周期の延長が課題となっている。近年、ロボットによる発電機機内点検技術が開発され、短期間で高精度な点検が行われつつあるが、固定子に内通風整流化のために設置された壁である「バッフル」が取り付けられている発電機は、これがロボット点検の障壁となっていた。

 また、回転子に発生する可能性のある亀裂検査は、従来、回転子を固定子から引き抜き、液体接触媒質や検査液を使う非破壊検査が実施されており、ロボットでは実施できなかった。

タービン発電機の断面図 出典:東芝エネルギーシステムズ

 今回、同社が固定子側に突っ張りながら回転子を走行するロボットを開発したことで、バッフルのある発電機のロボット点検を実現した。また、液体接触媒質を使用しない非破壊検査技術の開発により、回転子を固定子から引き抜くことなく、回転子の亀裂検査を実施することが可能となり、同社製の事業用火力・原子力機で従来と同様の詳細点検がロボットで実施可能となる。

 同ロボットの特徴は、固定子側に3本のアームで突っ張りながら、ロボットを回転子に押し付け走行することから、これまでロボット点検が難しかったバッフル付き発電機でも、3本のアームを順番に折り畳みながらバッフルを回避して走行し、発電機機内の詳細点検ができる。

開発した点検ロボットの外観 出典:東芝エネルギーシステムズ
発電機内部の写真(左)と発電機内部のイメージ図(右) 出典:東芝エネルギーシステムズ

 ロボットのサイズは、厚さが最大35mm(ミリメートル)、長さ480mm、幅380mm、質量は4.7kg(キログラム)で、同社製の200MVA(メガボルトアンペア)級以上の中・大型火力機および原子力機の点検が可能だ。

 回転子の表面を走行するため、固定子側を走行して点検を行う他社製ロボットに比べ、高精細カメラにより最適なポジションから直接回転子コイル通風孔を撮影することにより、より精度の高い点検を実現する。

 液体接触媒質を使わない超音波探傷検査機構を新たに開発し、同ロボットに搭載することで、カメラによる目視点検だけでは確認することが難しい回転子や回転子コイルを保持する楔(くさび)の内部に発生する亀裂を、回転子を固定子から引き抜かずに検出する。

 また、「多チャンネル超音波プローブ(探針)」を新たに開発。通常の超音波探傷検査では超音波プローブを前後左右に動かす必要があったが、同技術により、回転子を引き抜いた状態と同等の検出精度で点検できる。

 さらに、専門検査員による固定子楔のハンマー打音緩み診断をロボットで実現するため、小型軽量で打振力に優れたハンマー機構と高精度な音響診断アルゴリズムを開発した。楔の緩み状態を専門検査員が打診音を聞いて診断するのと同じ精度で、段階的な緩み診断が可能だ。

 本体は回転子の周方向のどの位置でも、固定子側のスロット(コイルを収納する鉄心の掘り込み部)を検出し、ロボット自体の制御アルゴリズムによりスロットに沿って自動直進する。ロボットの走行を操作員がコントロールする必要がなく、高精度な検査を行う。

 他にも、発電機の設計データを基に、ロボットが自動で点検ポイントまで移動し、回転子通風孔検査、回転子超音波探傷検査、固定子楔緩み打音検査、固定子鉄心検査(EL-CID)を実施し、自動診断を行うアルゴリズムを開発している。設計データをあらかじめインプットすることでロボットによる検査時間が予測できるとともに、検査と同時に診断結果の確認が可能だ。

 東芝エネルギーシステムズは、同ロボットを活用し、他社機を含めた既設発電所向けのサービス事業を国内だけではなく北米、東南アジアなどグローバルで取り組みを強化する方針だ。

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