三菱電機が建設を進めていた、直流送電システムの製品開発・検証施設が完成。洋上風力発電や太陽光発電等との連系が容易で、再生可能エネルギーの利用効率を高められる直流送電システム事業を本格的に展開する。
三菱電機は2018年11月、自励式直流送電システムの製品開発・検証を目的に兵庫県尼崎市の「系統変電システム製作所」内に建設していた「HVDC(高電圧直流)検証棟」が完成し、同月26日から稼働を開始すると発表した。同社は自励式直流送電システム事業に参入し、トータルブランド「HVDC-Diamond(HVDC ダイヤモンド)」をグローバルに展開することで、2020年度までに累計受注高500億円以上を目指す方針だ。
直流送電は、交流送電より送電効率が高く、洋上風力発電や太陽光発電などとの連系が容易なため、再生可能エネルギーの利用効率を高める技術として期待されている。同社によると、世界における直流送電システムの市場規模は2017年度約7700億円で、再生可能エネルギーの利用増加に伴い、今後は年率6%程度の成長が見込まれるという。
直流送電システムには交流・直流間の変換に対し、交流系統内に変換器容量に見合った発電機が必要な他励式と、不要な自励式がある。このうち、接続する系統条件に制約の少ない自励式直流送電システムの需要が今後は増えると予想されており、三菱電機は、同検証設備を用いて、交流送電線事故・直流事故発生時の動作検証を進めることにより、信頼性の高いシステムを目指す。
自励式直流送電システムは、直流・交流間の電力変換を行う複数の変換所とこれらをつなぐケーブル、または送電線から構成される。HVDC-Diamondは、変換所に用いる装置や技術および直流送電システム全体を統括する制御・保護システムに対する同社のトータルブランドで、グローバルに同ブランドを展開することで受注の拡大を図る。
自励式直流送電システムHVDC-Diamondの特徴は、個々のシステム要件に最適な制御機能およびハードウェア構成の採用により、運用時の安定運転と落雷などによる交流送電系統事故発生時には運転継続を実現する。また、高速応答の保護機能搭載により、直流事故発生時に過電流による設備機器の損傷を防止するなどの特徴がある。
さらに、高耐圧・大電流パワー半導体モジュール(HVIGBT)の採用により変換装置のモジュール数を削減し、電力変換所の小型化と低コスト化を図った。パワー半導体モジュールを2列・並列構成とし、モジュール数を柔軟に構成することで幅広い送電容量帯にも対応する。
なお、今回建設したHVDC検証棟の建屋面積は1217.6平方メートル、延床面積1767.8平方メートル、鉄骨造り一部地上2階建。検証設備の仕様は設備容量50MW(メガワット)で、送電線を持たない直流送電設備で構成となっている。主要設備として変換装置、制御・保護装置、受電設備などを備えている。
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