スマートエネルギーWeek 2019 特集

NTT×東京電力が目指す「スマートな電力ビジネス」とは?スマートエネルギーWeek2019

東京電力とNTTが2018年に折半出資で設立した新会社TNクロス。電力×ICTによる新たな価値創造を目指す同社の取り組みについて、「スマートエネルギーWeek2019」でTNクロス 代表取締役社長 高見表吾氏が語った。

» 2019年04月08日 07時00分 公開
[長町基スマートジャパン]

 「スマートグリッドEXPO」(「スマートエネルギーWeek2019」内、2019年2月27日〜3月1日、東京ビッグサイト)で、東京電力とNTTが2018年に折半出資で設立したTNクロスの代表取締役社長 高見表吾氏が特別講演に登壇し、「NTT×東京電力で目指すスマートな電力ビジネス」と題して同社の取り組みを紹介した。

TNクロス 代表取締役社長 高見表吾氏

 脱炭素化、電源分散化、デジタル化などにより電力事業分野は大きな変革の時を迎えている。そうした業界環境の中で、NTTと東京電力は両グループが保有するリソース・ノウハウを活用し、新時代に適合したスマートな電力ビジネスの創造を実現するため、折半出資により2018年7月に共同企画会社TNクロスを設立した。

 電力事業分野では、脱炭素化、電力自由化、電源分散化、デジタル化、人口減少等といった社会構造の変化を迎えており、業界の垣根を越えたイノベーションや連携による、新たな価値の創造が期待される「Utility3.0」の世界が間近に迫りつつある。Utility3.0は、独占・規制下にある垂直統合体制のエネルギー事業(1.0)、電力会社・ガス会社の法的分離後の事業(2.0)に続く、将来のエネルギーインフラの世界を指すもの。TNクロスもこうしたトレンドを見据えて設立された企業だ。

 東京電力とNTTとの協業については、NTTは通信用蓄電池、予備用発電機などのリソース、運営ノウハウ、運用体制を持つ。国内では4km(キロメートル)おきに通信ビルを持ち、先進のIT技術を所有する。東電は電力事業のノウハウ・体制、送配電インフラ、電力・系統制御技術などがあり、この両社の強みの有機的技術的、アセット・ノウハウの総合的連携を行うことで、電力×ICTによる新たな価値創造を目指す狙い。「ただ、インフラ企業同士であるからこそ、社会的課題解決やライフスタイル変革につながるものに取り組むべきと考え、具体的なテーマとしては、BCP・エコ、調整力・VPPを当面の主要ターゲットに定めて検討する」と高見氏は同社の方針を紹介した。特に東電とNTTのインフラやノウハウの連携による省エネや再エネの普及促進および災害に強いエネルギー供給等社会的要請に基づく協業事業の創出をターゲットとしている。

 また、TNクロスとしては「kWhの担い手は再エネへ」「価値提供サービスに溶け込むエネルギー」「電化分散化の同時進展」「モビリティとユーティリティの融合」「他インフラと融合する地域グリット」の5つをテーマに取り組みを進めている。

 さらにTNクロスは、目指す姿として「スマートな電力ビジネス」を掲げており、再生可能エネルギーの利用拡大、エネルギーコストの合理化、基幹系統と連携した地域系統の実現を図るため、通信ビルの蓄電池、EV、電力系統などのリソース、電力技術、ICT、エネルギーマネジメントなどの技術基盤、蓄電池制御、EV運用、直流給電などの新技術などを組み合わせて、アプローチする。

 この他、災害に強いエネルギー供給を実現するため、防災拠点の機能維持、状況に応じたエネルギー供給、情報のタイムリーな発信にも取り組む。

 具体的な取り組みとしては209年2月に千葉市と新たなエネルギーソリューションの実証共同検討に関する協定を締結した。この事業では、災害時に、避難所などの公的施設だけでなく、公用EVや防災拠点となり得る民間施設などへの電力維持を行うとともに、それに必要な蓄電池等の設備を利用して、再生可能エネルギーの利用拡大などの平常時のエネルギーニーズにも応えていくことを検討している。

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