「光触媒式太陽電池」の実用化へ前進、千葉大が性能向上につながる因子を特定蓄電・発電機器

千葉大学の研究グループが光触媒を両極に用いる「高電圧型太陽電池」の性能を向上させる因子を特定。高効率かつ低価格な太陽電池を実現する光触媒式太陽電池の実用化を後押しする成果としている。

» 2020年02月12日 07時00分 公開
[スマートジャパン]

 千葉大学の研究グループは2020年2月4日、光触媒を両極に用いる「高電圧型太陽電池」の性能を向上させる因子を特定したと発表した。光触媒結晶における電子の分布の変動しやすさを示す分極率と、光酸化反応の起こりやす(活性)を制御することで、起電力と出力を高められることを解明したという。研究成果は、米国化学会が1月27日に刊行した「ACS Sustainable Chemistry & Engineering」第8巻第3号に掲載された。

 既存の電池では単セルでの起電力1V(ボルト)以下がほとんどで、より高電圧型の太陽電池を実用化するには、直列に重ね合わせる必要があった。そこで光触媒式太陽電池によって高効率かつ低価格な太陽電池を実現する研究が進められているものの、光触媒式太陽電池の場合、光電極の電気的、化学的特性の複雑なバランスに依存するため、性能を向上させる因子が明らかになっていなかった。

 千葉大学の研究グループではこうした因子を明らかにするため、光触媒結晶の形状や薄膜形成法に着目。光触媒に酸化チタン結晶(TiO2)を用い、負極上にさまざまな形状(紡錘状、立方体状、菱形状)やサイズを制御して合成した触媒結晶を配置した。また、薄膜形成法についてもキャスト法、スライド法、粉砕&機械成膜法など、複数の方法を調査した。

 その結果、サイズをそろえた立方体状、菱形状のTiO2はいずれも分極率が低くなった。一方、サイズが不ぞろい、あるいは紡錘状に合成したTiO2は分極率が高く、触媒活性における酸素解離反応が遅いため、太陽電池の出力を85.2μWcm2、起電力を1.94Vまで高めることに成功した。

形状とサイズを制御したTiO2膜のインピーダンス測定と分極率との関連(上)および18O2ガスと TiO2膜表面の酸素原子との交換における反応の起こりやすさについてのエネルギー図(下) 出典:千葉大学

 研究グループは既にTiO2に有機色素を添加することで起電力を2.11Vまで高めることに成功している。今回の成果と組み合わせることで、屋外に設置でき、より環境負荷の少ないバックアップ用電源としての光触媒式太陽電池の実現が期待されるとしている。今後は起電力だけでなく、出力が生物電池以上のレベルとなる光触媒式太陽電池の実現を目指す方針だ。

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