写真で見るソーラーシェアリング倒壊事故、安全な設備設計に必要な視点とはソーラーシェアリング入門(35)(1/2 ページ)

「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」について解説する本連載。今回は台風などの自然災害によるリスクを考慮した発電設備の設計について考えます。

» 2020年08月20日 07時00分 公開

 2020年度のFIT制度で低圧規模の全量売電対象にソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)が残ったことで、改めて野立ての太陽光発電設備とソーラーシェアリングのコスト差が注目されています。その中でも最も差が出る部分は、野立てと比べて大きく資材量が増える架台と作業工数の増える施工費用です。しかし、この部分を変に発電事業寄りのコスト感覚で考えてしまうと、後々大きなトラブルに発展することがあります。今回は、台風などの自然災害によるリスクを考えた架台の設計についてまとめました。 

台風などでのトラブル事例:太陽光パネルの飛散

 野立てでもソーラーシェアリングでも同様ですが、暴風によって架台から太陽光パネルが脱落する事態は発生し得ます。よく見かけるのは、太陽光パネルの裏側からの風によって破損・脱落・飛散する事例です。この原因には太陽光パネルの固定方法の不備や架台の強度不足の他に、後述する架台の沈下などで生じた歪みによって太陽光発電パネルの固定具が緩んでいるところに、強風を受けて脱落するといったケースもあります。

太陽光パネルの飛散は農地にもダメージが残ってしまいかねない

 架台から脱落した太陽光パネルが農地に落下して割れたガラスが飛散すると、そのガラスだけを土の中から選別して除去することは極めて困難です。そうなれば、ガラスが含まれている可能性がある場所の土を丸ごと除去せざるを得なくなりますが、その後の土壌再生には大きな手間がかかります。他にも、同じ敷地内や近隣の農業用ハウスなどを太陽光パネルが直撃して、傷つけてしまうなどの被害も想定されます。

 設計段階での対処としては、太陽光パネルの固定方法の工夫とともに、沈下などを防止する基礎構造で架台の歪みを最小化すること、また運転開始後も定期的な固定状況の点検を行うことが重要です。

台風などでのトラブル事例:設備の沈下

 こちらも、野立てでもソーラーシェアリングでも同様に起きる事態ですが、特に水田や水田から転換した畑など、地盤が弱い場所で発生するのが、設備の沈下です。その多くは事前の地盤調査が不十分だったことにより、杭基礎などが支持層まで到達していなかったり、独立型のコンクリート基礎でも荷重を十分に支えられる設計ではなかったりすることが、発生要因になります。1反(約1000m2)程度の農地の中でも地盤の様子はさまざまで、排水方向や土中の水の流れなどで特定の場所だけ徐々に不同沈下が発生することもあり、その発生するタイミングも設備の完成から1カ月ということもあれば、年単位で進行することもあります。

 沈下を起こすと架台に歪みが生じ、特に押さえ金具で太陽光パネルを固定している場合には固定状態が不十分になり、先にも述べた暴風による脱落・飛散を招くことがあります。設計段階でしっかりとした地盤調査を行い、その結果に応じた基礎構造を採用できていれば多くの場合は予防できますが、残念ながら各地で目立ってきているトラブルの一つです。

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