太陽光発電のケーブル盗難対策 スクラップ買取業者に届出や本人確認を義務付けへ第3回「金属盗対策に関する検討会」(1/4 ページ)

太陽光発電事業者を悩ませているケーブル盗難問題。警察庁ではその対策として、届出制度や本人確認の義務化など、金属スクラップの買取業者に向けた新たな施策を取りまとめた。

» 2025年01月21日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

 太陽光発電所のケーブル等を対象とした「金属盗」の認知件数は、2024年(暦年。以下同様)には2万件を超えた(速報値)。確報値のある2023年の認知件数は16,276件、検挙件数は3,226件であり、被害総額は約133億円に上る。近年の金属盗の検挙率は、20〜30%程度に留まっている。

図1.金属盗の認知件数 出典:金属盗対策に関する検討会

 太陽光発電所のケーブル盗難は、当該発電所の事業者にケーブル復旧工事や売電収入の喪失といった直接的な損失が生じるだけでなく、盗難の増加により、損害保険料の値上げや補償の対象外となるといった、業界全体への影響も生じている。損害保険の引受けがない状況では銀行から融資を受けられないため、太陽光発電の新規案件開発が困難となる。金属盗の増加は、国の再エネ目標の達成を困難とするおそれもある深刻な問題である。

 このため警察庁の「金属盗対策に関する検討会」では、今後の金属くずの買い受け規制や金属盗犯行用具の規制の在り方について検討を行い、その第3回会合では対策の取りまとめが行われた。

金属盗の発生状況とその要因

 2023年の金属盗認知件数16,276件を地域別に見ると、その6割が関東に集中しており、茨城(2,889件)、千葉(1,684件)、栃木(1,464件)、群馬(1,437件)、埼玉(1,172件)の上位5県で、全体の53%を占めている。なお、太陽光発電所のケーブルに限ると、全体の92%が関東に集中している。

 警察庁の統計ではさまざまな金属製品を対象としているが、2023年の被害品のうち、「金属ケーブル」が件数ベースで約55%(太陽光発電所のケーブルは33%)、金額ベースで83%を占めており、材質別に見ると約半数が「銅」となっている。

図2.金属盗の被害状況(品目別・材質別) 出典:金属盗対策に関する検討会

 このような金属盗の増加は、世界的な金属価格の上昇が背景となっており、銅(銅スクラップ)は、他の金属と比べ、特に高額で取引されている。国内での銅スクラップ流通量は、年間100〜120万トン程度と推計されている。

 アルミも比較的高価であるが、ケーブルに巻かれているゴムをはがす作業工賃を差し引いた売却益は少額となるため、アルミケーブル窃盗の事例は少数である。

図3.国内金属スクラップ価格の推移 出典:金属盗対策に関する検討会
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