電力供給の安定化を目指す「中長期取引市場」、新設に向けた制度設計が本格化第2回「中長期取引市場検討WG」(2/4 ページ)

» 2026年07月01日 07時00分 公開
[梅田あおばスマートジャパン]

中長期取引市場における商品の負荷パターン

 制度設計WGにおいて、中長期取引市場で取り扱う商品の負荷パターンの案としては、以下のように整理されていた。

  • 実需給の3年前に販売される商品は、ベース商品を中心に、ミドル商品の取扱いも検討する
  • 実需給の1年前に販売される商品は、ミドル商品をメインに、ベース商品やピーク商品の取扱いについても検討する

 なお中長期取引市場検討WGでは、「ベース商品」とは対象期間の全日0〜24時の間に出力一定の電気を受け渡す商品、「ミドル商品」とは対象期間の平日8〜20時の間に出力一定の電気を受け渡す商品、と定義している。

 旧一般電気事業者等による相対契約(2024年度締結)において、長期卸では基本的にベース商品が取り扱われており、一部の事業者はミドル商品も取り扱っていることや、単年卸では主にベース商品・ミドル商品が取り扱われており、その他さまざまな商品も取り扱われていることが確認された。

表1.旧一電等相対契約における長期卸の概要 出典:中長期取引市場検討WG
表2.旧一電等相対契約における単年卸の概要 出典:中長期取引市場検討WG

 WG事務局は、取引の分散を避け、流動性を高める観点から、当面の間、中長期取引市場運営者に対して最低限設定を求める商品の負荷パターンとしては、「3年前1年物」はベース商品、「1年前1年物」はベース商品とミドル商品とすることとした。

 この事務局案に対して事業者からは、より多様な商品を上場することにより、流動性の向上が期待されるなどの意見が寄せられている。

事後調整(燃調)付商品の取扱い

 中長期取引市場で取引される商品は、入札・約定から受け渡しまでの期間が長いため、通常の固定価格の場合、市場参加者は当該期間の燃料費の変動リスクに晒されることとなる。

 また中長期取引市場には、「広く参照可能で適正かつ安定的な電力価格指標の形成」という役割が期待されており、先述の表1のように中長期の相対取引では事後的な燃料費調整(燃調)が付されることが一般的であるため、これと同様に中長期取引市場でも事後調整付商品を取り扱うことが望ましいと考えられる。

 他方、予見性の観点から事後調整のない商品を求める小売電気事業者も存在するため、中長期取引市場の市場運営者に対して、事後調整付商品と事後調整のない商品の双方の設定を求めることとした。

 なお制度設計WGでは、燃調のような事後調整付商品を取り扱う場合、各社がそれぞれ自由に設定するのではなく、事後調整に係る標準的な算定式等の導入を前提とするなど、各売り入札の内容を横並びで比較できるように商品設計すべきと整理している。

 このためWG事務局からは、LNGや石炭等の発電用燃料の長期調達契約において燃料費調整のために活用される、原油等の指標(Index)等を活用した事後調整を設定する方法が提案された。ただし、商品の分散による市場の流動性低下を避けるため、事後調整付商品の設定は最大で2種類までとすることが望ましいとしている。

 なお、実際には発電事業者各社で燃料種の割合や発電コストが異なるため、取引所が共通指標による事後的な調整内容を設定する方式の場合、発電各社(売り手)には燃料費の変動リスクが残ることとなる。このため、売り手は自社の売り価格にリスクプレミアムを上乗せすることが想定され、相対取引価格と比べ、(他の条件が同じと仮定すれば)価格上昇の一因となると考えられる。

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