一部のエリアを中心に、中長期の厳しい電力需給状況が予想される中、政府はその対策として容量市場に「補完オークション」を新設する方針だ。休廃止電源を対象とし、実需給の1〜3年前の供給力をまとめて募集する形式となる見通しだ。
電力の安定供給確保のためには、必要十分な供給力(kW)を確保することが大前提となる。このため電力広域的運営推進機関では、毎年の供給計画取りまとめにおいて、今後10年間の供給信頼度を確認している。
これまで中長期的な需給バランス評価には、確率論的手法に基づく年間EUEを指標としてきたが、第119回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」において、初めて、確定論的手法による厳気象H1需要時の予備率評価を行ったところ、2029年度の東北・東京エリアで、電力の安定供給に最低限必要となる予備率3%を下回る厳しい見通しが示された。
これまで、容量市場メインオークションや長期脱炭素電源オークション等により、長期的な供給力が確保されており、さらにオークション実施後の需要増加等に対応するための短期的な供給力確保策として、追加オークションやkW公募、予備電源制度が整備されてきたが、一定の課題を抱えていることが明らかとなった。
このため、資源エネルギー庁の電力安定供給WGでは、短中期の供給力を追加確保するための検討を進めており、広域機関の第121回「調整力及び需給バランス評価等に関する委員会」では、容量市場を補完する新たなオークションの開催が提案された。
最新の2026年度供給計画によれば、今後の電力需要(8月の最大3日平均電力)は、データセンターや半導体工場の新増設等により、増加が続くと見込まれている。
他方、火力発電の新増設及び休廃止計画を供給計画(図2)で確認すると、新増設から休廃止を差し引いた設備量は減少傾向が続いており、特に2029年度はマイナス幅が大きいことが見て取れる。
2025年度供給計画と比べ、2026年度供給計画で新増設と休廃止の両方が大きく増えた理由は、長期脱炭素電源オークションにおいてLNG火力のリプレース(古い設備の廃止と新設がセット)が増えているためである。電源の新陳代謝を進めることは制度目的の一つであるが、同一敷地でリプレースするには、古い設備の廃止・撤去が先行するため、新設までのタイムラグが生じてしまう。また、非効率石炭火力のフェードアウトが進んでいることも、減少幅の拡大に寄与している。
図2で、2029年度より手前の年度で火力の新設が少ないことは、供給力確保の中心的施策として2020年から開始された容量市場メインオークションでは、電源の新設への寄与は限定的であることの現れであると考えられる。
なお、2026年度時点で経年45年を超過する火力電源は火力全体の10%程度であり、現時点で供給計画に休廃止が計上されていないものの、2035年度時点で営業運転開始から50年超となる火力は1300万kW程度存在するため、今後も更に休廃止が増加する可能性がある。
火力などの安定電源を新設するには10年程度の長い年数を要するため、短中期の供給力を確保するには既設電源の活用が有効である。ただし、通常の既設電源はすでに供給計画などに計上されているため、供給力として追加可能な電源は、供給計画や需給見通しに計上されていない休廃止予定電源に限られる。
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