──文字盤以外の部分で、デザインにこだわったのはどのような点でしょうか?
富松さん Smart Accessを搭載したことでリューズスイッチが新たに加わったのですが、このデザインは何度も試作を繰り返しました。T1000では、「オシアナスに初めてリューズが付きました!」という登場感を出すために、あえてかなり大きなサイズのリューズスイッチを採用しました。
しかし、薄型ケースのマンタでは小型化する必要があります。でもリューズスイッチの存在感はアピールしたい。そして操作性もきちんと確保しなくてはいけません。こうしたさまざまな要素を満たすリューズスイッチのサイズにはこだわりがあります。
さらに見た目でもマンタならではの質感のあるリューズスイッチ、お客さまが店頭で見たときに思わず手に取って触りたくなるようなものを目指しました。T1000ではリューズスイッチの先端にオシアナスのロゴを描いた青いパーツを埋め込みましたが、S2000では腕時計の正面からもリューズスイッチに青いリングが輝いて見えるデザインになっています。
──ケースやバンドの質感も、ほかのモデルと比べて上質感がありますね
富松さん マンタは旧モデルからずっと、金属の質感や「塊感」をいかに見せるかという点にこだわっています。例えばケースの斜面とべゼル、バンドの一部にはザラツ研磨を施して、金属の質感を強調しています。
ケースの形状はS1400とは異なっています。S1400では文字盤のレイアウトがユニークだったので、あえてケースは流れるような曲面形状にして、真ん中に1本ミラーラインがあるバンドにつながっていくというシンプルなデザインにしました。
それに対してS2000は文字盤のデザインがシンプルなので、ケースのエッジを強調して面を多くし、質感やシャープ感を演出しています。
──バンドにはどのような特徴があるのでしょうか?
富松さん S2000のバンドの構造は、S1400と同じ「桟残し(さんのこし)構造」が採用されています。これは、複数のパーツを組み合わせることでバンドのコマを形成する方式です。
一つひとつのパーツを職人さんが磨いて仕上げ、それを組み合わせることで面とエッジがしっかり出るデザインです。コマを単一の部品にした場合には、どんなに頑張って加工してもこれだけシャープな面やエッジを表現することはできません。また複数のパーツで構成することで、フィット感が大幅に向上するという効果もあります。
──最後に、時計デザイナーとしての立場から、腕時計へのこだわりを教えてください
富松さん 腕時計は、自分がデザインしたものをお客さまが日々身に着けることで、お客さま一人ひとりの人生のストーリーに登場人物として参加できる、唯一の機械製品だと思うんです。
私がそもそも時計デザイナーを志したのも、腕時計のそうした点にとても魅力を感じていたからです。今でも常に、「この時計を買ってくれる人、手に取ってくれる人は、一体どんな人なんだろう? どんな使い方をしてくれるのだろう?」と想像してワクワクしながらデザインすることをモットーにしています。
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