毎年6月4日からの1週間は「歯の衛生週間」だ。もともとは6月4日を「むし」とかけて虫歯予防デーとしていたもの。近年、携帯用電動歯ブラシが人気になり、職場でも昼休みに歯磨きをする人が増えるなど、日常のデンタルケア習慣は向上している。
虫歯になると痛みもさることながら、治療に日数や費用がかかる。全国保険医団体連合会が2010年にまとめた「歯科医療に関する1万人の市民アンケート調査」によれば、52.7%が歯科の窓口負担を「高い」と感じており、34.5%が治療しない理由に費用の心配を挙げている。
専門家によれば、虫歯予防は正しい食習慣とオーラルケアの確立が重要だ。虫歯の原因となるデンタルプラーク(歯垢)は、おもに砂糖を材料として形成される。砂糖を多く含むおやつやジュースなどを口にする回数が増えれば、つまり間食が多くなれば多くなるほど虫歯のリスクは高まる。
有効な対策は、歯磨きの励行だ。できれば毎食後に歯をみがくことが好ましいが、時間がなければうがいだけでもしておきたい。特に気をつけたいのは夕食後だという。
その理由は唾液。唾液にはリゾチームなどの抗菌物質が含まれ、デンタルプラークの中の酸によって溶かされた歯のエナメル質を修復したり、酸を中和したりする。しかし、睡眠時には唾液の分泌が低下してしまう。
大阪大学名誉教授で歯学博士の大嶋隆先生は、「特に夕食後は丁寧に磨いてください。歯ブラシの後に、歯間ブラシを使うのもよいでしょう。これに加えて、定期的に歯科医師の診査を受けると、対策は万全なものになります」という。
2012年5月12日、13日に開催された「日本小児歯科学会 第50回記念大会」で、気になる発表が行われた。「ウーロン茶の飲用が虫歯予防の有効な手段の1つとなり得る」というものだ。
「ウーロン茶によるデンタルプラーク沈着抑制効果の検証」と題した発表で、大阪大学大学院歯学研究科、岡山大学大学院医歯薬総合研究科、サントリー食品インターナショナルによる共同研究だ。
具体的には、ウーロン茶に含まれるポリフェノールが、虫歯原因細菌が産生する酵素、グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)の活性を阻害する働きを検証した。GTFは、グルカンというネバネバした物質を作り、これが歯の表面に沈着してデンタルプラークを形成する。
緑茶、紅茶、ウーロン茶の原料は、同じ茶の木の葉。しかし、製法の違いによって、茶葉に含まれるカテキン類が酸化重合した分子量の大きいウーロン茶特有のポリフェノールができる。このウーロン茶ポリフェノールがGTFの活性を抑制するので、デンタルプラークがはがれやすくなるというのだ。
単盲検クロスオーバー法で実施した検証実験では、18歳から43歳までの男女31人を対象に、市販のウーロン茶とミネラルウオーターを、毎食中に約200ミリリットル、間食時と就寝前に約100ミリリットル飲ませた。被験者は2群に分けられ、ウーロン茶とミネラルウオーターを飲む時期をずらして、試験を2回実施した。
また、実験前には、歯科医師が被験者の歯を徹底的に清掃してデンタルプラークを除去。被験者は試験期間中の3日間、歯磨きとうがい、各種お茶の飲用が禁止された。そして、4日目の朝に歯垢染色剤を用いて新たに形成されたデンタルプラークの有無を歯科医師が検証する。この時、医師は被験者がどちらの飲料を飲んでいたのかは知らされていない。
実験を行った大嶋博士は、「動物実験の結果から、ウーロン茶ポリフェノールにデンタルプラーク形成に対する強い抑制作用のあることは分かっていましたが、ヒトで、ウーロン茶を飲むだけで、これほど明確なプラーク沈着の抑制作用が認められるとは思っていませんでした」とコメントしている。
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