第58鉄 竹取伝説と富士山とつけナポリタン――岳南鉄道杉山淳一の +R Style(5/5 ページ)

» 2012年06月08日 11時18分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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岳南鉄道の貨物列車

 子供たちと別れて駅へ。学校の敷地の道路寄りに、見事な花壇がある。豊かな街だなあと改めて思う。そういえば、和菓子屋のご主人ほか町の人々は、私が電車で来たというと、わざわざ電車で来てくれたのかとうれしそうな顔をしてくれた。岳南鉄道は地元の人々に愛されてるなと思った。

岳南鉄道の名優たち

 岳南富士岡駅に到着。機関車はここに並んでいた。パンタグラフを下ろし、任を解かれて休んでいる。車体も窓ガラスもピカピカに磨かれていた。岳南鉄道は貨物列車の運行を続けたかったらしい。しかし、JR貨物は吉原駅から先の引受を廃止。荷主はトラックに切り替えざるを得なかったという。JR貨物が被災して合理化、高速なコンテナ列車輸送に統一する動きがあるという。もういちど、この機関車たちに活躍の時が来るだろうか。

 ……考え事をするとお腹がすく。ようかんパンを食べて電車を待とう。

富士市の元祖B級グルメ「ようかんパン」(左)。中には、アンコが入っていた!(右)

岳南江尾駅 電鈴式踏切警報機とワンコ

 終点の岳南江尾駅は工場と倉庫と住宅街。観光するものは特にない。しかし先月の取材の時、この駅に黒い猫がいた。スタイルが良くて、カメラを向けると目線を合わせてくれる。野良のくせにモデルの気品。また会えるかな……と行ってみたが、残念ながら見当たらず。

 その代わり、散歩中のワンちゃんたちとすれ違う。匂いを嗅がれる。私も犬を飼っているから、たぶん靴下あたりから犬の臭いがするのだろう。いや、もしかしたら私の加齢臭……? いやいやいや、飼い犬ってことにしておいて。

 この駅のそばには電鈴式踏切警報機があり、チンチンチン……という音が出る。最近は電子音の新型が普及しており、今ではとても珍しいという。そうだっけ? と思いながら見に行き、電車の通過を待つ。ああ、そうだ。子供の頃に家の近所で聞いた音だ。懐かしい。

いまは珍しくなった電鈴式踏切警報機。高架は新幹線。岳南鉄道は短い路線だが、新幹線と2回も交差する
岳南江尾駅の駅舎。向こうの高架を新幹線列車が通り過ぎた

 踏切を見物した帰り、大きなスーパーマーケットを見つけたので入ってみた。ご当地アイテムはなかったけれど、缶チューハイが安かったので数本と、デリコーナーのソーセージを購入。旅ではなく、生活の延長みたいだ。なんとなく岳南に住んでいる人のフリをしてみたかった。帰りの東海道本線の電車は暗くなって景色が見えないから、これで車中の楽しみができた。

map 今回のルート。ここをクリックすると筆者による各ポイントについての説明が読める

今回の電車賃

東海道本線 東京−吉原 片道2520円(東京からは青春18きっぷで日帰り圏)

岳南鉄道1日フリー乗車券 400円


著者プロフィール:杉山淳一

book A列車で行こう9 公式ガイドブック(エンターブレイン)

 肉食系鉄道ライター(魚介類が苦手)にして、前世からの鉄道好き。生まれて間もなく、近所を走っていた東急池上線の後をついていったという逸話あり。曰く「いつもそばを走ってたから、あれが親だと思った」

 日本工学院大学非常勤講師(テキスト商品学)。コンピューター系出版社でゲーム雑誌の広告営業を経験した後、フリーライターとなる。オンライン対戦ゲーム、フリーウェア、PCテクニカルライティングなどデジタル系の記事を専門とし、日本初のEスポーツライターとしてオンライン対戦ゲーム競技を啓蒙する。

 趣味は日本全国の鉄道路線探訪で、現在の路線踏破率は約8割。著書は『もっと知ればさらに面白い鉄道雑学256(リイド社)』『知れば知るほどおもしろい鉄道雑学157(リイド社)』『A列車で行こう9 公式ガイドブック(エンターブレイン)』『A列車でいこうDSナビゲーションパック(アートディンク:同梱冊子担当)』など。


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