日産が提示するステアバイワイヤ技術の可能性(3/4 ページ)

» 2012年10月22日 14時46分 公開
[朴尚洙,MONOist]

二重のバックアップシステムで冗長性を確保

 今回発表したステアバイワイヤ技術は、モーターとECU(電子制御ユニット)をそれぞれ3個使用している。3個のモーターの内1個は、ドライバーがステアリングホイールを操作する際に、タイヤが路面から受けた力などの路面情報を反力として伝えるのに用いる。残りの2個のモーターは前輪の車軸に組み付けており、ステアリングホイールの操作に合わせて前輪タイヤの切れ角を制御する。

日産 日産自動車が発表した次世代ステアリング技術のシステム構成(出典:日産自動車、クリックで拡大)

 3個のECUは、各モーターの動作を制御するとともに、互いの動作に故障や異常が発生していないか常時監視し合っている。もし、あるECUに不具合が発生すれば、他のECUが即座に制御を交代する。さらに、車載バッテリーの不具合などで、万が一すべてのECUやモーターに電力が供給されなくなる場合に備えて、ステアリングホイールと前輪の車軸を機械的に接続するステアリングシャフトを設置している。

 先述のような万が一の状態になれば、通常はステアリングホイールとステアリングシャフトを切り離しているクラッチを切り替えて、機械的な接続を確保するという仕組みだ。これら二重のバックアップシステムにより、ステアバイワイヤの課題だった冗長性を確保した。

タイヤを直接手で動かすように操作できる

 機械式ステアリングは、ステアリングホイールとタイヤが直結しているために、路面の凹凸や悪い舗装状態によって、ステアリングホイールを握るドライバーの手に振動や揺れが伝わる。この振動や揺れの影響を修正するために、ドライバーは無意識のうちにステアリングホイールを操作している。

 日産のステアバイワイヤ技術は、ステアリングホイールとタイヤは接続されていないので、路面からのノイズがドライバーの手に伝わらない。ドライバーは、無意識に行っていた修正操作が不要になるので、運転時のストレスや疲労が低減される。さらに、機械式ステアリングよりも、ステアリング操作に対するタイヤの動きの応答性を高められる。「あたかも手足を車両の外側へ伸ばしているような、タイヤを直接手で動かしているような操作感が得られる」(日産)という。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.