シチズン、池袋にブランドの世界観を伝えるコンセプトショップ

» 2013年02月22日 12時39分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

 日本時計協会の資料を基に矢野経済研究所がまとめた報告によれば、2011年の国内腕時計市場は4462億円。前年比111.8%と回復基調にあるとはいえ、6000億円を超えていたリーマンショック以前の水準にはまだ遠い。

 同研究所では2012年も「長引くデフレ下の影響により『安物』に飽きた若い世代の『本物志向』が広がりつつあり、20代後半から30代の一般消費者に需要が広がった」ことで市場が押し上げられたと分析している。

 ただし、売上が好調なのはスイス時計を中心とした海外ブランド勢で、市場全体の75.6%を占めている。果たして日本メーカーはどのように立ち向かっていくべきなのか。

すべてのコンセプトショップを同じルック&フィールで統一

 2月21日、東武百貨店 池袋店に「シチズン コンセプトショップ 池袋東武店」がオープンした。全国で5店舗目、東日本エリアでは初となるショップだ。

シチズンシチズン

 コンセプトショップの狙いは、客が実際に腕時計を手にとりながら、シチズン時計の持つブランドの世界観を体感してもらうこと。ブランドパーソナリティとして「知性」「情熱」「革新」、プロダクトポリシーとして「技術と美の融合」を掲げ、「美しいデザインは最新のテクノロジーが完成させる」という同社の考えを伝えていく。

 ショップデザインは、ブランドカラーのグロスブラックを基調に、光発電「エコドライブ」をイメージしたLEDの間接照明による光の演出を加える。直線的で硬質、シャープな印象は、腕時計の世界的な展示会「バーゼルワールド」のシチズンブースにも通じるところがある。

 ディスプレイ台などの什器1つをとってみても、ルック&フィールは徹底的に統一している。プロジェクトを担当する松口聡さんによれば、5つのコンセプトショップすべてで同じ印象になるように専用什器を開発したという。素材、色遣いが同じだけでなく、製造する業者までも同じ。

「LEDによる光の演出は一番のこだわりです。はっきりとした白になるように、色温度は4000〜4200Kにすると決めてあります。出店先によってはもっと低い色温度を要求されることもありますが、妥協できないポイントですね」(松口さん)

 また、時計の配置も同一になるように決めている。「どのような店舗でも店頭の一番いいところには旬の製品が並びますが、それ以外の商品となると販売員の好みが反映されることが多いのです。コンセプトショップでは、すべての商品の配置が本社の販売戦略によって現場に降りてきています」

シチズンシチズンシチズン 販促用のミラーもコンセプトに基づいてデザインした

「シチズンは高い」というイメージを払しょくできるか

 国内時計事業部長の志摩祐一郎さんは、「数年前まで、シチズンは時計の持つ機能面を中心に訴求して販売を続けていましたが、これではお客さまにコンセプトまで伝わらず、本当の理解をしてもらえないのではないか」と切り出す。

シチズン 松口聡さんと志摩祐一郎執行役員

 2011年3月にオープンした京都店以降、心斎橋、神戸、名古屋と4つのコンセプトショップを展開してきたが、売り場での客の反応は明らかに変わったという。

「光をうまくつかった演出によって、いい意味で売り場が浮き上がってみえるようになりました。でも、お客さまにとって『シチズンの時計は高い』というイメージもあり、恐る恐る足を運ばれる。ところが、腕時計を手にとってみると、自分の予算内で欲しいものが買えることに気付く。実際に売上は伸びています」(志摩さん)

 これまでの5店舗はすべて百貨店への出店だった。シチズンの腕時計を購入する客層と、百貨店の客層の差については、チャンスだととらえているようだ。

 「シチズンのFacebookページには20代から30代のファンも多い。例えば、シチズンと百貨店とのコラボキャンペーンを実施することで、百貨店の既存顧客以外の足を百貨店に誘導できると思っています。コンセプトショップでの先行販売、あるいは限定モデルなどを展開し、情報発信基地としての活用を考えています」

シチズンシチズン (左)同日発売の腕時計「Eco-Drive EYES」は世界限定500本(右)3月7日発売の「xC」のプロトタイプも実際に腕に着けられる

 同社では今年度中にコンセプトショップを日本全国に十数店舗まで拡大する予定だ。

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