マレーシア航空不明機、原因解明のカギを握る「ブラックボックス」とは?秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/2 ページ)

» 2014年04月25日 10時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

 消息を絶ったマレーシア航空370便の捜索が難航している。オーストラリア当局は先日、インド洋で不明機のブラックボックスから発信された信号を2回にわたり探知したと発表したが、いぜん行方は分からないままだ。

 旅客機の墜落事故が起こると、テレビの報道番組が「──乗客の懸命の救出作業がつづき、現場ではブラックボックス回収のための捜索も始まった模様です」などと伝えているのを聞くことがある。ときどき耳にするこの「ブラックボックス」とは、いったいどのようなものなのか? 当局が発表した「ブラックボックスの発信電波」とは何か? 今回はその「ブラックボックス」について解説しよう。

飛行機と空と旅 マレーシア航空が運航するボーイング777(写真はイメージ)

ボイスレコーダーとフライトレコーダー

 事故の防止は、その記録をしっかりと残し、アクシデントに真正面から向き合って原因を究明することからスタートする。ブラックボックスは、そうした航空機事故の原因究明に欠かすことのできない装置。事故当時と飛行記録やコクピットクルーたちの会話が、そこに記録されている。

飛行機と空と旅 フライトレコーダー(上)とボイスレコーダー。「ブラックボックス」はそれらの総称だ

 ブラックボックスという言葉は「ボイスレコーダー(CVR=操縦室音声記録装置)」と「フライトレコーダー(FDR=飛行データ記録装置)」の総称として使われているもので、正式な用語ではない。しかしニュース番組などの影響で、一般の人たちにもよく知られる言葉になった。

 ボイスレコーダーには、機長や副操縦士の無線による地上との交信や、コクピット内でのクルー同士の会話、さらには騒音や背景音などまでがすべて記録される。従来タイプでは前の録音を消しながら新しい内容を残していく30分のエンドレステープが使用され、事故が起きる直前30分間の様子が記録されていた。

 現在の新しいタイプでは、記録媒体をエンドレステープからICメモリに変更。同じエンドレス方式だが録音時間は120分間に拡大され、コクピット内の状況やキャビンとのやりとりを含め、原因究明のための手がかりがより多く入手できるように進化している。

 これに対して、事故前の詳しい飛行状況を解明するために必要不可欠なデータを記録するのがフライトレコーダーだ。従来タイプのものは高度、対気速度、機首方位、垂直加速度、経過時間などの飛行データが磁気テープにダイヤモンド針で刻み込まれていたが、最近はデジタル化が進み記録される情報もより細密化している。

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