世界最大のオール2階建て旅客機、エアバスA380を解剖する:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(6/6 ページ)
2007年10月にシンガポール航空のシンガポール/シドニー線でデビューを果たしたエアバスのオール2階建て旅客機A380の、世界へのネットワークが広がっている。「空飛ぶ豪華ホテル」の異名をもつこの巨人機は、どんな発想から生まれ、旅の可能性をどう広げたのか?
A380就航で旅のスタイルにも変化が
シンガポール航空は2011年の夏スケジュール(3月27日〜)より、A380をシンガポールとロサンゼルスを成田経由で結ぶ路線に導入すると発表した。これにより、前述した成田発11時30分のSQ637便はエアバスA330-300に機材を変更し、A380は20時50分発のシンガポール行きSQ11便で使用。同時に今後は、日本からロサンゼルスへの旅(成田発19時15分・SQ12便)でもA380を体験できるようになる。さらに2011年5月には大韓航空もA380を受領し、翌6月から成田/ソウル(仁川)線で導入することが決定した。またかねてから噂のあったスカイマークも4機のA380をエアバスに正式発注し、ロンドン線をはじめとする国際線参入への準備に入ったと伝えられている。日本の空は今後、ますます賑やかさを増しそうだ。
とくに大韓航空は、A380のキャビンをわずか407席でレイアウトしているという。メインデッキ前方にファーストクラス12席を、後方にエコノミークラス301席を配置し、アッパーデッキはすべてビジネスクラスに。そのビジネスシートは、わずかに94席しか置かない。きわめて贅沢なスペースの使い方だ。
ソウルは日本からの身近な旅行先として根強いブームが続いているだけに、大韓航空のA380就航は多くの日本人旅行者にとって朗報だろう。最初に旅の目的地を決め、そこに行くために必要なエアラインを選ぶ。それがこれまでの一般的な旅のプランニングの方法だった。しかしA380が就航して以降は、まず「この飛行機に乗ろう」という思いが先にきて、その就航地の中から旅のプランを決める──そんな旅のスタイルも出てきているのだ。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
関連記事
- 「トラベル」インデックス
- 「秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話」
- ボーイング787“ドリームライナー”は空の旅をどう変える?
開発の遅れが懸念されていた次世代機787について、ボーイングは今年1月に「初号機納入は2011年第3四半期(7〜9月)」と発表した。1号機を受領するのはANAだ。スケジュール通りに進行すれば、いよいよ年内にも日本の空でデビューすることになる。787は、これからの空の旅をどう変えるのか? - トルコ航空で“空のシルクロード”を行く
今年はどこへ旅しようか? ゴールデンウィークや夏の休暇に向け、早くもあれこれプランを練っている人も多いだろう。世界は広い。どのエアラインでどこを目指すかで、旅のスタイルも経験できる内容も変わってくる。2011年にぜひ候補の1つに加えてほしいのが、“空のシルクロード”を行くトルコ航空での旅だ。 - タイ国際航空で行く南ア・サファリの旅(前編)
動物たちに会いたい。檻の中で飼われているライオンやキリンやゾウではなく、広大なジャングルに棲息する野生の動物たちに──。アフリカに行こうと決めたのは、そんな思いを実現するためだった。利用したのはタイ国際航空のバンコク経由便だ。前・後編の2回に分けて報告する。 - チャイナエアラインで行く! 羽田・台北、日帰りの旅
羽田から32年ぶりとなる国際定期便が再開した。これからは日帰りの海外旅行も可能になるという。就航初日のチャイナエアラインの早朝便で、実際に台北へ飛んだ。当日の最終便で帰国するまでの詳細を、時間軸を追ってレポートする。 - 海外旅行と腕時計の上手な付き合い方――航空ジャーナリスト・秋本俊二の場合
誠Styleで「秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話」を連載中の秋本氏にとって、ノートPCと腕時計は必需品だという。特に腕時計の使い方については、海外旅行を満喫するためのコツがあるというが……。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.