ITmedia NEWS >

日本最大級の開発者のためのコラボレーションネットワークITソリューションフロンティア:トピックス

» 2004年09月03日 00時00分 公開
[安田守,野村総合研究所]

システム開発者のための支援システム

 NRIでのシステム開発プロジェクトは、顧客の業務を支援するシステムを構築するものと、システム開発業務自体を支援するシステムを構築するものがある。後者については、部分的なものにとどまることが多く、システム開発業務全体を支援するものがなかった。そこでNRIでは、プロジェクト管理のための全社統一ネットワークシステム「デベロッパーズネット」(以後、DVネット)を2003年4 月から稼動させた。DVネットは、その名のとおり、開発者を支援するためのシステムである。

 DVネットの利用者は稼動開始時には300名足らずであったが、1 年間で数千名にまで急速に拡大している。おそらく日本国内で最大の、開発者のためのコラボレーションネットワークシステムのひとつであろう。利用者の内訳は、NRIの社員が約36%、パートナー会社の社員が約57%、NRIのお客様が約7 %である。DVネットは利用を強制しているわけではなく、あくまで利用する価値があると判断したプロジェクトが自主的に導入しているが、多くのプロジェクトで利用されている。

従来の開発支援ツール

 これまで、システム開発にあたってはプロジェクトごとに工夫を凝らして、Microsoft ExcelやMicrosoft Access、あるいはIIS-ASP (Webサーバーのプログラムのひとつ)、オープンソースなどを用いて簡易的な管理ツールを作っていた。以前調査したところ、NRIでは百数十のツールがプロジェクトから申告され、その約半数が管理ツールであった。

 これらのツールには短所と長所がある。短所としては、NRI内のローカルな管理ツールなので、短期的に成功しても長期的には成功しにくいことである。ツールを開発したときはよいが、維持管理が組織的に行われないと、ツールの適用を他の類似プロジェクトへ拡大できなくなる。またツール作成者の異動があっても、機能の拡張要望への対応や、OS (基本ソフト)のバージョンアップへの対応など、個別の対応を続けなければならない。

 長所としては、工夫を凝らした多くの草の根的なツールが作成されることで、実戦的な管理方法がよくわかることである。これを分析することでNRIのエンハンスメント系開発プロジェクトの管理方法が理解できる。

エンハンスメント業務の体系化

 プロジェクトのマネージャーやメンバーに尋ねると、「1 つとして同じ管理をするエンハンスメント系開発プロジェクトはない」と言う者もいた。開発習慣、組織や体制、管理レベルの高低など、プロジェクトごとに異なる点があるというのであった。

 しかし、必ずしもそうではないことが、現地調査と草の根ツールの分析調査でわかっていた。システム開発業務では、共通する部分と個別の部分が存在する。しかも、NRIのエンハンスメント業務には歴然とした体系が存在する。それをまとめたものが「NRI標準フレームワーク保守業務版」と「保守管理業務体系定義書」であり、これがDVネットのベースとなっているのである。

現場ニーズからのシステム選定

 DVネットは、NRIのASP(アプリケーションサービスプロバイダー)サービス「BizMart」と、NEC情報システムズのドキュメント管理エンジン「PROCENTER」という2 つの汎用製品で構成されている。この2 つの製品にたどり着くまでには多くの製品を評価した。選択の決め手は2 つのツールが基盤的なソフトだということである。各部署の開発手法は、それぞれ前述したように体系的なものになっているが、それぞれでやりたいこととやり方が違うという状況があった。これを克服するためには、共通部分と個別部分を切り分けた上で、体系的な部分は共通部分で対応し、カスタマイズ部分は個別に対応できる柔軟な基盤的ソフトが不可欠であった。2 つの製品はその基盤的な機能により、認証などの機能連携も容易なため、DVネットという1 つの仕組みにできたのである。

DVネットの活用方法

 プロジェクトでの活用事例をあげると、(1)遠隔地開発の協力会社との情報共有、(2)顧客との依頼文書のやり取り、(3)簡易なテーマの管理、(4)トラブル・障害管理、(5)システム運用・リリース管理、(6)ヘルプデスク支援、(7)チーム運営、(8)営業支援、などがある。

 プロジェクトへのヒアリング調査によれば、導入直後から連絡ミスや連絡漏れのような情報流通のロスが減り、約10%の生産性向上がみられたケースもある。DVネットを利用するプロジェクトが多ければそれだけ成功事例も増え、これを横展開することで品質と生産性を向上させることができるのである。

 DVネットはエンハンスメント業務に特化したものではなく、新たな業務のような非定型な業務を定型化してシステム化したい場合にも適用可能である。すなわち非定型業務用のERPパッケージ基盤とも言える。DVネットは、その柔軟な基盤的機能を活用することで、業務の生産性向上に威力を発揮する。

Copyright (c) 2004 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission .



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.