ITソリューションフロンティア:トピックス
個品識別技術を用いた商品トレーサビリティ(後編)
(前編はこちら)
トラッキングデータを発生させる4つのイベント
トラッキングデータを発生させるイベントには、大きく分けて次の4通りがある。
(1)ある場所に物が存在すること、あるいは移動したことを検知した場合
倉庫で物の出荷・入荷があった場合や、店頭の在庫管理を自動化するためリーダーライターを内蔵した商品棚(スマートシェルフなどと呼ぶ)が商品の存在や移動を検知した際などがあげられる。
(2)複数の商品を1つに梱包して運ぶ際に、複数の商品を1つのタグで代表させた場合
たとえば廉価な商品の場合に、ICタグによる個品管理はコスト的に見合わないことから、製造ロット単位で管理するような場合などがこれに相当する。また、個々の商品にICタグが付いている場合であっても、出入荷の都度、中のタグをすべて読むよりもダンボールのタグ1つで処理したほうが都合がよい場合も考えられる。
(3)ある物に対して処理を加えて、別の物を作った場合
これはさらに次の3通りに分類できる。
1)加工
ある原材料を消費して別の製品を発生させる(材料からの部品の生成など)
2)組み立て
複数の物品を1 つに組み上げることで別の製品を発生させる(パソコンの組み立て、自動車の組み立てなど)
3)分割
数量を増やす変化を加える(牛肉の切り分けなど)
(4)管理項目としてトラッキングデータを記録することが求められている場合
たとえば温度や振動の影響を受けやすい商品において、商品の状態を表す管理項目を自動もしくは手作業で検査し、あるしきい値に達した場合にトラッキングデータとして記録するような場合である。
トラッキングデータの共有と公開
これらのトラッキングデータを企業間で共有する方法としては、企業間でデータベースを共有せず、ICタグで検出された入出荷情報とEDI(電子データ交換)を連動させることが考えられる。この場合、商品情報とトラッキングデータを取引先との間で自動的に送受信する形になる。しかしEDIを用いた場合、トラッキングデータは各企業内のデータベースに蓄積・保存されることになるので、情報の適切な保管や真正性の確保、消費者などへのスムーズな情報開示という点では懸念も残る。そのため、トレーサビリティに必要な情報を蓄積・保管するデータベースは第三者的な組織が運営することが望ましい。実際、牛や豚の個体情報あるいは乳製品の生産情報に関して、生産者組合などの業界団体や自治体などがデータベースを構築し、情報を公開する例が増えている。
履歴情報の運用ルールづくりが課題
具体的な例として、鋼材から部品を製造する工程における加工履歴データの取得について検討してみよう(図4参照)。
鉄鋼メーカー(1)は、原材料である鋼材Aを製造・出荷し、ここで「発生」という加工履歴、および「出荷」という移動履歴が記録される。
部品メーカー(2)の加工センターでは、鋼材Aを「入荷」し(移動履歴)、さらにこれを「消費」して部品BとCを「発生」させた(加工履歴)。この際、鋼材Aを「消費」したという加工履歴と、部品BとCを「発生」させたという加工履歴が同一の処理であるという履歴を残すために「加工紐付けデータ」を記録する。その後、部品メーカー(2)は部品BとCを「出荷」した(移動履歴)。
このように移動履歴、加工履歴、加工紐付けデータの3つの情報を記録しておくことで、鉄鋼メーカー(1)が製造した鋼材Aを原材料として、部品メーカー(2)が部品BとCを製造・出荷したという履歴をトレースすることが可能になる。
同様に、セットメーカー(4)は部品メーカー(2)が「出荷」した部品Cと、部品メーカー(3)が「出荷」した部品Dを「入荷」し(移動履歴)、部品CとDの「組立」により、新たに製品Eを「発生」させ(加工履歴)、それを出荷した(移動履歴)。移動履歴データと加工履歴データに加えて、部品CとDの「組立」と製品Eの「発生」が同一の加工であることを記録する加工紐付けデータも記録しておく必要がある。
実際に商品トレーサビリティシステムでは、製品に使われている部品の履歴情報や品質情報の形式が統一されず比較できなければ、どこかに不具合が発生しても原因を特定できない可能性が出てきてしまう。そのため、データベースに記録されるこれらの履歴情報の項目や更新頻度、保存期間あるいはデータベースの参照方法について業界内で合意を形成する必要がある。
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