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「改造車」と自作PCの奇妙な接点(2/2 ページ)

» 2004年03月01日 11時31分 公開
[小寺信良,ITmedia]
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 だが内部にイルミネーションを使ったって、フタをしてしまえば見えない。そこで登場するのが、透明なアクリルで作られたPCケースである。これも最初は店内展示用としてサイドパネルだけ透明にしてあったものが、販売されるにしたがって次第にエスカレートしていったものだ。

 今のところもっとも過激なのが、イルミネーションケースである。PCケース自体をアクリルで作ることで、内部が見えるようになっているだけでなく、ケースに12個のLEDが取り付けられており、これも光る。

アクリル製で中が見える上に12個のLEDが付いていて光る筐体。LEDモードにするかどうかを切り替えられる

 善意に解釈すれば、中が見えるのでメンテナンスしやすいとかいろいろお題目は言えるのだが、ここまで来ると光る意味合いという以前に、そもそもPCである意味合いがだんだんなくなってくる。

USBがアツい

 車用アクセサリコーナーをのぞくと、「便利グッズ」という名の下に開発された品々が、これまたいろいろあるものだ。シガーソケットから電源を取れば、冷蔵庫もドライヤーも加湿器も動く。だいたい便利グッズという類のものは、なきゃないで済むのである。そしてPCにも、まったく同じ現象が起こっている。

 用もないのにUSBから電源を取る、いわゆるジョークグッズのような扱いで、USB扇風機などは数年前から細々と売られてはいた。だがこれも次第にエスカレートしていき、「USBはいざら」や「USBアロマポッド」など、実用的なのかいまいちビミョーな製品も出現してきている。

 USBひざ掛け「お膝元」やUSBホットコースター「あっちっち」などは、単に暖めるだけだ。それなら普通にコンセントから電源取りゃいいじゃねえかと思うかもしれない。

あまりにも有名なUSBひざ掛け「お膝元」

 もともとPCは電源が必要なわけだから、車と違ってコンセントはその辺にあるだろう。それをあえてUSBでやるというあたり、既にある意味、車よりもイッてしまっているとも言える。

 もう一つPCと車の共通点として、やたらとメーターやツマミを付けたがるという点も見逃せない。CPUクーラーでお馴染みのCoolerMasterからは、PCの状態監視という流れで電圧や温度などのセンサーをアナログメーターで表示するという製品が出ている。これはどちらかというと、クロックアップ関連製品であろう。

やっぱメーターはアナログに限る?

 一方でツマミ類は、別の方向から進化したものだ。最初は静音化の一環で、ファンの回転数をツマミでコントロールする、通称「ファンコン」と呼ばれる製品があった。最初は本当に小さな基板にボリュームが付いている程度で、自分でケースに穴を開けて取り付けるようなものだったが、それが次第にシステマチックに5インチベイに収まるようになってきた。最近ではステータスディスプレイも付いてツマミも高級化するといったものも出てきている。

ツマミも高級感があるVantecの「NXP-101」

 これらの製品は、「マルチファンクションパネル」と呼ばれている。元々は背面にあるUSBポートやオーディオジャックを前面に出すために、5インチベイにパネルを付けるようになったものが、次第に上記のような機能と合流してきたものだ。さきほどのUSBグッズが流行る要因となったのも、マルチファンクションパネルの存在が大きいのかもしれない。

 ちょっと探せばこれらのパーツがごろごろ見つかるのが、今の自作PCの世界なのである。車はゼロから作るのは大変だが、PCはパーツを集めればできる。また車と違って、改造による法律違反や、自分が死んだり誰かを殺したりという危険はそれほど多くはない。まあどんな世界にも常識を逸脱した無茶をする人がいるものだが、それでも車より安全性は高いと言っていいだろう。

 なにしろ追求するポイントが、「爆速なのに静音」というところなので、人様に迷惑をかけることも少なかろう。警察も暴走族を捕らえて説教するだけでなく、こういった世界に努力の方向性を向けてやるというのも、ある意味正しい更生の手段なのではないかと思うのだが、どうだろうか。いや、ま、「どう」って言われても困るだろうが。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。

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