コラム
» 2004年03月09日 19時31分 UPDATE

e-Day:うな重が好物というDellの新CEO

わずか3週間前、テキサス州オースチン郊外のDell本社を訪ねたばかりというのに、デル会長がCEO職をロリンズ社長兼COOに譲るというニュースが飛び込んできた。取材メモを引っ張り出し、今回の交代劇の「真相」に迫ってみよう。

[浅井英二,ITmedia]

 しつこいくらい「テキサス」が追い掛けてくる。

 先週末に飛び込んできたニュースは、マイケル・デル会長(39歳)が創業から20年を節目にCEO職をケビン・ロリンズ社長兼COO(51歳)に任せる、というものだった。わずか3週間前、テキサス州オースチン郊外のDell本社に彼らを訪ねたばかりなのに……。

jn_dellhq.jpg ラウンドロックキャンパスの本社ビル

 「われわれも知りませんでした」と話すのは、デルで広報を担当するSさん。それもそうだ。

 事前に分かっていたら、あれもこれも聞きたかった……。これまで十数年、IT業界を取材してきたが、そういうことはしばしばあった。

 ただ、現地で見たり聞いたりしたことから、「ああ、あれはそういうことだったのね」と推し量れることが幾つもある。特に二人のインタビューはそうだ。取材メモを引っ張り出し、今回の交代劇の「真相」に迫ってみよう。

売り上げ倍増計画はロリンズ主導

 寒波も去り、ラウンドロックに暖かい太陽が戻った2月17日午後、インタビューは本社ビルのボードルームで始まった。30人は座れそうな広い、そして天井の高い部屋だった。

 「彼はいつも遅刻だから……。先に始めようか?」

 意外にも先に姿を現したのはネクタイを締めたデルだったが、挨拶をする間もなくロリンズも飛び込んできた。米本社の広報スタッフによると、二人そろってインタビューに応じるのは極めて稀だという。ロリンズもタイを締めていて、取材後、一緒に大切なミーティングが控えていることを想像させた。

 取材メモをひっくり返すうちに、幾つかのポイントに気が付いた。私を含む日本人プレスは、大まかに分けて6つの質問をしたのだが、デルが単独で答えたものが2つ、ロリンズのみが1つ、デルが答えてロリンズも補足したものが2つ、逆にロリンズが先でデルもコメントを付け足したのは1つだった。

 これらをテーマ別に見ると、「年々改善される営業利益率」と「サービス」についてはデル単独、「600億ドル企業に向けた事業の多角化」はロリンズのみが答えた。二人とも答えたのだが、デルが先に口を開いたのは「水平分業」と「液晶テレビをはじめとするデジタルホーム戦略」、ロリンズが主に答えたのは「エンタープライズ市場」だった。ちなみにどちらかが答えるよう指名した質問はなかった。

 「600億ドル企業」を目指す「売り上げ倍増計画」は、ロリンズのイニシアチブといっていいだろう。2002年4月に打ち出された同計画のニュースを読んだとき、1960年生まれの私は、池田内閣の「所得倍増計画」をダブらせた。戦後が終わり高度成長期の入り口に差し掛かった当時、国民1人当りの年間所得はまだ300ドル。これを10年以内に600ドル近くまで増やし、国民の生活水準を欧米先進国並みに引き上げようという希望あふれる計画だった。時代は違うが、ロリンズの大胆な計画に力強いリーダーシップを感じる。

 「PCとサーバだけで600億ドル企業達成は十分可能だ。周辺事業にも大きな機会があるが、PCやサーバという中核事業の成長に貢献しない独立したイニシアチブは考えていない」とロリンズ。闇雲な多角化に走らないようしっかりと手綱も締めている。

 20年で売り上げ400億ドル超の企業に成長したDellだが、1992年には財務的危機に見舞われている。リテールチャネルへの進出という多角化が失敗だった。そのとき、立て直しに奮闘するデルを助けたのが、当時Bain & Companyのコンサルタントだったロリンズだ。

 インタビューの終わりに、「短期間で立て直せたのは、困難な時期に入社して助けてくれたケビンのおかげだ」とデルは当時を振り返り、感謝を忘れない。

デルに耳打ちするロリンズ

 ロリンズが主に答えたもう一つのテーマは、エンタープライズだ。

 2ウェイや4ウェイのIAサーバをはじめ、エンタープライズ分野でも標準化とコモディティ化が進む。ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)やストレージも例外ではなく、これらの分野でもDellは同社が関与することによって一気に標準化を加速させ、「Dellモデル」が強みを発揮できるコモディティ化を狙っている。

 このとき、ロリンズは何かを促すようにデルに耳打ちしている。

ロリンズ 「彼らはこのあと、HPCC(High Performance Computing Cluster)検証センターを見学するらしい」

デル 「そうか、でもその話はケビンがしてくれ」

 そんなやり取りがあったかどうかは知らないが、結局、HPCCについて言葉を続けたのは彼だった。

 「マイケルとケビンは過去数年間、二人体制で経営を統括していました。会社の経営に関わる質問に二人で答えるのは自然です」とデルのSさん。

 ロリンズは、定期的に、それもほぼ四半期ごとに来日しているという。日本食も好きで、特に「うな重」が好物だという。次回来日したときには、ぜひ、ひそひそ話の「真相」を知りたいものだ。

jn_rollins02.jpg 業績目標達成時の約束で、日本法人の全社員を前に歌を披露したこともあるという

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