問題の歪みに関しては、全く違いがわからない。どうやら歪みの原因は、ヘッポコいと言われていた出力段コンデンサではなかったようである。
歪みの問題が解決しないということは、せっかくのコンデンサ交換も今の段階では、もう音の好みで選ぶしかないということである。そこで今度はもう一方にOSコンを接続して、聞き比べてみた。
これもちょっと聴いたぐらいでは、違いはほとんどわからない。若い頃から耳には自信があり、絶頂期にはスピーカーのクロスポイント周波数までピタリと言い当てるほどの筆者だったが、ああオレも歳取ったなぁとマリアナ海溝よりも深く落胆した。
だがよくよく考えてみればそのはずで、コンデンサはエージングもなにもしていないわけだから、すぐに本来の特性が出てくるはずもないではないか。とまあ自分で自分に言い訳して瞬時に気を取り直す。
ちなみに筆者のこの立ち直りの早さは上の娘に遺伝子直撃しており、叱った20秒後にはケロリとしてマンガなど読んでるのを親の立場として見ると、さぞや筆者の母などは行く末を心配したことだろう。
話を元に戻すと、確かにエージングしないまでも、いろんな曲を聴いてみると、だんだん違いがわかってくる。その時点では、OSコンの涼しげでクリアな音よりも、若干ブラックゲートのほうが筆者の低音偏愛趣味に合うような印象を受けた。またブラックゲートのほうが小型というか細長いので、表面実装するわけではないことを考えれば、若干スペース的に有利でもある。
本格的にリード線をハンダ付けして、両方ともブラックゲートに交換した。格納場所は、なるべくリード線が短い方がいいだろうということで、ヘッドホンジャックと電源コネクタのフに並べることにした。ショートしないよう、セロファンで足に仕切りをして、一応の完成となった。
それからしばらく、この状態で使用しているが、特に改造による問題は起こっていない。持ち歩いても全然大丈夫だ。さらにコンデンサを交換した効果は徐々に現われ、今では以前から不満であった低域の伸びが改善されたのは、大きな収穫であった。ブラックゲートはもともと低域特性の良さで定評のあるブランドだが、こんな小さいものまで同じような特性を持っているとは驚きだ。
だが肝心の音の歪みは、未だ解決に至っていない。ここが関係しないということは、あとの原因は結構いろいろ考えられる。アンプへの入力か、あるいはアンプそのものの特性か……。だがこれ以上の回路変更は、シロウトの筆者には難しい。
音質の変化が面白かったので、少なくともバッテリーがダメになるまではこのまま使ってみるつもりだが、さて、次に買うとしたら何が適当か。音質とか操作性とか、いろいろ選ぶ要素はある。だが筆者の場合製品のチョイスには、そのコンセプトに同調できるかというところが、大きなウエイトを占める。
ビデオ系のポータブルプレーヤーもそろそろ良いものが出てきているし、秋にはWMV対応プレーヤーも市場に出回ることだろう。容量に余裕があれば、音楽とビデオの兼用プレーヤーとして使うという方法も、有り得るかもしれない。
AV複合機か、それともやはりオーディオ専用機か。カセットプレーヤーしかなかった頃に比べて、格段にうれしい悩みの多き時代となった。
小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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