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コラム
» 2004年07月29日 12時26分 UPDATE

次世代DVD競争――漁夫の利を狙うマイクロソフト? (1/3)

HD DVDとBD両陣営の競争は激しさを増しているが、その合間をぬって、影響力を急激に拡大しているのがマイクロソフトだ。Longhornでの対応をテコに自社が関わる著作権保護技術とコーデックの採用を両陣営に迫り、標準の根幹をがっちり握る戦略に出ている。

[本田雅一,ITmedia]

 7月26日に行われたHD DVDの記者会見は、技術面あるいは事業計画といった面で驚くような発表はなかった。東芝やNEC、メモリーテックといったHD DVD支持の企業が、これまで通りの主張を繰り返したからだ。

 東芝は、上席常務兼主席技監の山田尚志氏が従来から「ハードディスク搭載が当たり前なのだから、録画用途はこれで十分だろう。配布メディアとしてはHD DVDの方が優れている」と話してきた。またメモリーテックは既にDVDとHD DVDの両方を一つの生産ラインでカバーする装置の開発に成功しており、設備投資も10%程度の上昇で収まるという情報を出していた。

 記者会見では、Blu-ray Disc(BD)は放送録画、HD DVDは配布メディアに適しており、これからの時代にはHD DVDの方がマッチすること。また、物理面で技術的に困難な選択肢を取るよりも、半導体技術の進歩によるデジタル処理の進化に委ねる方が良いという主張もあった。

 これまでの経緯を見る限り、これらの主張はHD DVD側からすれば当然の内容であり、冒頭述べたように驚く要素はなんらない。その中にあって、マイクロソフトのシニアエグゼクティブアドバイザー、矢嶋利勇氏の言葉だけが、大きなインパクトを残した

 Blu-ray Disc Founders(BDF)はより広範な企業の参加を求め、Blu-ray Disc Association(BDA)という新組織を設立、BDFはこのBDAに統合させることをすでに発表しているが、来週その説明会がある。あるいは、週をまたいでジャブの応酬をすることになるだろうか?

“Longhorn”を持ち出すマイクロソフト

 マイクロソフトの矢嶋氏は、実はDVDの策定が進められていた時代に東芝に所属し、主にハリウッドとの交渉で重要な役割を果たしたとされる人物だ。その後、ワーナーホームビデオの日本法人代表に就任。次いで、家電ビジネスへの進出を狙うマイクロソフトに迎えられた。

 タイム・ワーナーはグループ全体としては中立で、映画スタジオ部門も次世代光ディスクに対しては、特に一方を明確に支持するといった態度を示してはいない。しかし、その中にあって、DVD事業を行っているワーナーホームビデオだけは相当HD DVD寄りの立場を採っていたと言われていた。今回の発表でも、東芝出身ということもあって、マイクロソフトの矢嶋氏がHD DVD支持を表明することぐらいはあるだろうと思っていた。

 ところが、記者会見での矢嶋氏のプレゼン内容は、かなりショッキングなものだった。

 なにしろ、現時点でさえ2006年頃とされるLonghornで「ROMの規格さえ決まっていないBDのサポートは間に合わない」と言い切ったからだ。その後、「BD(Blu-ray Disc)も著作権管理技術にAACSを用い、VC-9(Windows Media Video 9のコーデック部分を抜き出したもの)を採用するなら検討してもいい。OSなのだから、条件がそろえばサポートできる」と言い直したものの、むしろ火に油を注いだ印象である。

 というのも、AACS(Advanced Access Content System)をBDが採用することは、業界内では1カ月以上前から決定事項として知られていたからだ。AACSは元々、IBM、Intel、東芝、Microsoft、Disney、Warer Bros. Studioが推進していた技術で、ここにソニーが加わり、最後に松下電器産業が参加して発表となった(発表リリース、PDFファイル)

 ソニー、松下電器、Philipsは、BD向けに別の著作権保護技術を開発していたが、まずソニーがAACSに参加(AV事業を担当する現場は独自方式で進める方向だったが、Sony Picture Entertainementが、映画スタジオの参加するAACSにくら替えするよう本社を説得したと言われる)。松下電器も映画スタジオ、具体的にはWarner Bros.に説得される形でAACSに参加し、著作権保護の統一規格が誕生することになった。

 前回、筆者が書いたH.264/AVC FRExtのコラムで、コーデックと著作権管理の関係でBD-ROMの策定が遅れ、ROMサポートは年内発売の製品では難しいだろうと書いたのは、AACSをBDが採用することが分かっていたからだ(執筆時点では未発表だった)。筆者が知っていたぐらいだから、矢嶋氏も知っているハズである。なぜ、AACSもからめてLonghornでのBDサポートを云々する必要があったのか、その理由が筆者にはサッパリ分からない。

 また、VC-9(SMPTE(全米映画テレビジョン技術者協会)の審議で、最初のバージョンなのになぜ“9”なのかとクレームが付き、VC-1と名称変更される予定だが)を採用すればWindowsでのサポートを考えてもいい、という発言は、公正取引委員会からの調査が入っている現状において、かなり過激な表現とも受け取れる。

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