コラム
» 2006年10月27日 11時30分 UPDATE

ネットベンチャー3.0【第13回】:ポータルビジネスはソーシャル化されるのか?(上) (1/2)

佐々木俊尚氏が日本のベンチャーにおけるWeb2.0ビジネス最前線を描く連載企画。ヤフーの井上社長は、SNSでは交換日記サービスよりも友達関係ダイアグラムが重要だとしてYahoo! JAPANの全サービスへの導入を目指しているという。その狙いは何か。

[佐々木俊尚,ITmedia]

SNSがインフラ化する

 10月6日に、月刊誌『プレジデント』の取材でヤフーの井上雅博社長をインタビューした。インタビューの内容については、同誌11月13日号を読んでいただければと思うが、このインタビューの中で井上社長はソーシャルネットワーキングサービス(SNS)について次のように語っている。

 「いまのSNSは友達関係ダイアグラムと交換日記サービスを一緒くたにされ、まとめてSNSと呼ばれてしまっているような気がします。でも僕は、交換日記というのはSNSの中のワンオブゼムに過ぎず、より重要なのは友達関係ダイアグラムの方だと思ってるんです」

 この井上社長の発言は、遠回しにmixiのことを指しているのは明らかだ。mixiの要素は人間関係ダイアグラム(マイミクシィ)と交換日記(マイミクシィ最新日記)の二つに分解することができるが、後者の日記サービスについてはSNSの本質ではないという話である。このあたりについては、私がCNET Japanのブログ『ジャーナリストの視点』でゼロスタート・コミュニケーションズを取材した際、羽田寛さんも次のように話していた。

 「ミクシィは上品な社交場で、ユーザーはただ人と触れあいたいためだけにミクシィに参加している。しかしSNSの可能性が100だとしたら、単に人と触れあいたいというニーズはその可能性のうちの5や10程度しかないのではないか? ひょっとしたらSNSにはまだ95の可能性があって、手つかずに残されているのではないか? SNSはここまでは、単なる物珍しさで増えてきた側面もあって、いまはまだ過渡期なのかもしれない。たとえばブログも最初のころはただ単に面白がられて多くの人が使うようになったけれども、しかしだんだん飽きられている部分もある。そこでブログを単なるサービスとしてではなく、プロモーションやCMSのツールとして使うようになってきている」

 つまりはSNSのインフラストラクチャー化ということだ。SNSを単なるウェブ上のサービスとしてとらえるのではなく、さまざまなサービスを提供する際の基盤として活用していこうという考え方である。ではSNSをインフラとしてとらえた場合、インフラとしてのSNSの本質は何なのか? それがつまり「人間関係なのではないか」というのが、羽田さんの考え方であり、そして井上社長の指摘でもある。SNSは「人間関係(ソーシャル)をコンピュータネットワークによって可視化する」という概念を顕在化したサービスであるから、人間関係が本質的であるというのは、当然と言えば当然のことだ。

 では、ヤフーの井上社長はこのSNSというインフラをヤフーにどう応用しようと考えているのか。

ヤフー井上社長が指摘するCGMの問題点

 Yahoo! JAPANは言うまでもなく、日本を代表する巨大ポータルサイトである。ゲートウェイとなるウェブサイトに数多くの消費者を集め、彼らに商品を買ってもらったり、さまざまなサービスを利用してもらうというビジネスだ。1990年代後半から2000年代半ばにかけて、ヤフーと楽天、ライブドアというガリバー3社はポータルメディアの覇権をめぐって戦ってきたのは、いまや歴史的事実になりつつある。

 このポータルが成長するためには、2つの要件がある。ひとつはポータルサイトに大量の消費者を集客すること。そしてもうひとつは、そうして集めた顧客に対して幅広いサービスを提供することだ。たとえば堀江貴文前社長が率いていたライブドアは、この2つのファクターを満たすためにさまざまな策を打ち出していた。前者の「集客」という要件を満たすため、ライブドアはプロ野球参入などで知名度向上作戦を進め、さらには圧倒的なリーチ率を持つテレビ・ラジオの視聴者を自社ポータルに誘導するため、ニッポン放送買収などの策に打って出たのである。そして後者の「顧客満足度向上」という要件を満たすためには、できる限り数多くのサービスのラインアップをそろえなければならない。ライブドアが2002年以降、M&Aをテコに個人向けの新事業を開拓してきたのには、そうした動機も明らかに存在していた。決して「虚業の金融屋が粉飾決算で企業買収をもてあそんでいた」というだけではなかったのだ。

 話を戻そう。B2Cであるポータルビジネスは、運営企業によって厳選されたコンテンツやサービスが提供されるサービスである。井上社長はこう話す。

 「ヤフーがWeb2.0を志向してCGMを使ったサービスを実現していこうとすると、問題になるのはコンテンツの質なんです。ロングテールで言うヘッドコンテンツに比べ、テールコンテンツは質の低いものが大量に混ざってきてしまうため、どうしても平均点が下がってしまう。これを何とかしなければ、CGMは使い物にならないだろうという風に思っているんです」

 ポータルビジネスは、文字通り「玄関口」である。人々はその玄関口のドアを通して、さまざまなサービスやコンテンツを受け取る。Yahoo! JAPANという玄関で提供されているものに関しては、「質はある程度高いだろう」という安心感があるわけだ。しかしWeb2.0の世界には、玄関口のような一本線のラインは存在しない。Web2.0の世界に存在する情報は、玄関口から消費者に向けて流し込まれるのではなく、単なるひとつの「海」としてただそこに存在している。そしてその海から、いかに簡単かつ有効に必要なデータ、正しいデータをすくい上げるのかがWeb2.0のサービスの要となる。

 そして、それこそがGoogleが90年代末からやってきたことにほかならない。かつて検索結果をABC順でしか表示できず、アルゴリズムクラッカーにもきわめて脆弱だった検索エンジンの世界に、情報を重要な順に並べるというユーザーインタフェイスを持ち込み、そしてアルゴリズムクラッカーにも耐える秀逸な検索テクノロジを築き上げた。あるいは連載の前回で述べたNewsingageUNの試みも、こうしたデータをすくい上げる仕組みを高度化させようという試みのひとつである。

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