コラム
» 2006年12月08日 11時00分 UPDATE

ネットベンチャー3.0【第19回】:バイラルマーケティングには可視化とリスペクトが必要だ(下) (1/2)

佐々木俊尚氏が日本のベンチャーにおけるWeb2.0ビジネス最前線を描く連載企画。ブロガーに企業のリリースを配信し、さらにブログに書いてもらうことで報酬を支払うビジネスが注目を集めている。

[佐々木俊尚,ITmedia]

ブロガー向けリリース配信サービス

 バイマというC2Cビジネスを運営しているベンチャー、エニグモがプレスブログを開始したのは、昨年12月のことである。

 プレスブログというのは、登録したブロガーに企業やブランドからの最新の商品、イベント情報などを配信。この配信したプレスリリースの内容をブログで紹介したブロガーに対して、プレスとしての掲載料を支払うというサービスである。たとえば12月3日のプレスブログのサイトを見ると、「加湿空気清浄機新登場」「新地震費用保険」「親子のためのスイーツ&ティールーム・オープン」「ものづくり人の為の転職サイト・オープン」など、電機製品から保険、カフェまでありとあらゆる商品やサービスなどが並んでいる。ブロガー向けに配信されているプレスリリースは、月に50本に上るという。

 ビジネスの仕組みは、次のようなものだ。企業の側はエニグモに、固定料金として30万円を支払う。これはリリースをプレスブログで配信するための配信料となる。エニグモ共同CEOの須田将啓氏は、「現在15万人のブロガーがプレスブログに登録しており、これらの人たちにリリースを配信するというだけでも、メールマガジン並みかそれ以上の効果があると思っています」と話す。

 そしてこれに加えて、ブログに書かれた場合に発生する従量制の料金がある。このあたりにエニグモは独特の計算式を持ち込んでおり、「商品内容」と「掲載条件」を掛け合わせた数値によって、単価が変わるようになっている。たとえば商品内容では、飲み物や食べ物だったらエントリーも書きやすいが、女性の生理用品や男性のカツラ、あるいは専門知識が必要な金融商品などは書くのはけっこうたいへんだ。また、企業の求める掲載条件もある。「製品開発時のエピソードにぜひ触れてほしい」「この内容とこの内容、こっちも入れて、要素を満たしてほしい」といった欲張りな要求に対しては、当然ブログを書く場合の困難度は高くなる。つまりはブログの書き込みやすさによって、単価が変わってくるわけだ。企業が払う従量料金は、この単価にブログの掲載数をかけあわせた金額となる。

 プレスブログと契約した企業数は、現在約200社に上っている。須田氏は「最初の1〜2か月は『まあちょっとだけならやってみるか』という模様眺めの企業が多かったんですが、3〜4か月すると大手企業がどんどんやってくるようになった」と話している。このビジネスモデルを同社が昨年12月にスタートしたときは「世界初ではないか」と言われたが、しかし現在ではかなりの数の企業が同業他社として参入してきたという。マーケティング業界でも、かなりの注目を集めているということなのだろう。

クライアントが期待する細かいセグメンテーション

 クライアントは、プレスブログのようなサービスに何を期待しているのだろうか。エニグモのもうひとりの共同CEO、田中禎人氏は「ブログで商品やサービスを紹介してもらうというのは、クライアント側から見れば雑誌広告に出広しているような意識ではないかと思います」と話す。インターネットの広告ではクリック率やコンバージョンなどの効果測定を前面に打ち出していることが多いが、しかしプレスブログの場合は成果をきちんと計測するというよりは、どちらかといえばバイラルマーケティングによって話題を盛り上げたり、認知が広がるような効果を期待しているケースが多いのだという。もっとも中には、プレスブログにもアフィリエイトやSEMと同等の効果測定を求めるクライアントも現れてきており、そうした場合には、ブロガーにエントリーで書いてもらうURLに専用のものを用意しておき、プレスブログ経由でアクセスされたページビューやコンバージョンを計るという手法を採っているケースもある。

 さらにいえば、いかに細かくセグメントされた個人を握っているかどうかが、こうしたマーケティングビジネスではカギとなっている。クライアント企業の側も、広告代理店やマーケティング企業にそうしたセグメンテーションを求めている。「20代の女性で、お肌の悩みを抱えている人」「3歳〜5歳の子供がいる世帯年収2000万円以上の夫婦」といった顧客層に、いかにダイレクトに広告を投げ込めるかどうかを企業の側は求めるようになっているのだ。そうなると、たとえば母集団が数千人程度しかないデータベースでは細かいセグメンテーションに対応しきれない。逆に母集団が大きくても、データベースに収められている人たちの属性が細かくなければ、それも意味がない。

 そこにブログが注目される要因がある。ブログは書き続けられるほどに、個人情報の膨大な集積となっていくからだ。そのブロガーがどのような食べ物を好み、どのような嗜好があって、どの程度のレベルの生活をしているのかと言ったことが、エントリーの内容からトレースできてしまうのだ。おまけにブログには他の人にインフルエンス(影響)を与える機能もあり、クチコミで情報を拡大させようというバイラルマーケティングを志向する企業にとっては絶好のプラットフォームとなるのである。

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