コラム
» 2007年06月12日 13時45分 UPDATE

金融・経済コラム:米国でのベンチャー投資の雇用、売上創出効果

国内ベンチャーキャピタルの投資額はGDPとの比率で主要国中最低であることは以前も指摘しましたが、米国においてはベンチャーキャピタルによる投資を受けた企業がGDPの17%を生み出している、という面白い資料がありました。

[保田隆明,ITmedia]

 先日、テレビ東京のワールドビジネスサテライトで紹介されていたニュースとして、米国の調査機関Global Insightとベンチャーキャピタル協会(NVCA)の調査によると、ベンチャーキャピタルから出資を受けた米国企業の生み出す2005年度の売上は米GDPのおよそ17%に相当する、というものがありました。

 大いに興味をそそられたので、プレスリリースの原文に当たって内容を確認してみました。リリースによると、ベンチャーキャピタルから出資を受けた米国企業の2005年度の雇用者合計は1000万人、売上合計は2.1兆ドルとなっています。これは民間企業で働く人たちの9%、米GDPの16.6%に相当するとのことです。

 また、ベンチャーキャピタルから出資を受けた企業の方が、出資を受けていない企業よりも雇用数、売上高の両方の成長性において優れていることも指摘しています。

 米国のベンチャーキャピタル協会が出している調査なので、ベンチャーキャピタルの存在意義をアピールするものであることは想像にたやすいですが、それにしても雇用者数と売上ベースでそれほどまでに米国経済に貢献しているとは立派の一言に尽きます。

 プレスリリースでは、ベンチャーキャピタルから出資を受けた有名な企業として、FedEx、Intel、Google、Starbucks、Home Depot.などが挙げられており、なるほど、確かにこのようないまや大企業となった企業群抜きでは、それほど大きなウェイトを占めるには至らなかったと思われます。

 日本でも同様の調査が存在しないかと思って探してみたのですが、残念ながら見当たりませんでした。日本のベンチャーキャピタルによる年間投資金額が、米国のそれに比べて少ないことはよく指摘されることですが(「ベンチャー投資資金は不足? 余剰?」参照)、いくら投資金額が大きくとも、パフォーマンスが悪ければ意味がありません。したがって、投資金額が大きいことのみを取り上げて米国のベンチャー投資は日本のそれに比べると発展しているとは言えないのですが、今回のGlobal InsightとNVCAの調査により、雇用者数、売上高でも米国ではベンチャーキャピタルの投資が間接的に米経済に大きな貢献をしていることが証明されたわけです。

 日本では新興市場、ベンチャー企業の不振により、それらをサポートするはずのベンチャーキャピタルへの風当たりも強い状況にありますが、単なる投資金額の大小に限らない議論、また一過性の業績不振や不祥事にとらわれない議論をするためにも、今回の米国でのベンチャー投資が間接的に経済全体に与える影響に関する調査は示唆に富むものではないかと思われます。

 なお、このプレスリリースでは、米国の州ごとのデータも存在します。それによると、シリコンバレーがあるカリフォルニア州での雇用者数、売上高が最も高いのですが、その割合は全体の20%程度です。むしろ上位10州にある程度まんべんなく雇用者数、売上高が計上されている様子が見てとれます。これは、米国でのベンチャー投資がいい意味で地域分散されていることを示すものでしょう。

 一方、日本の場合は、財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの「平成18年度ベンチャーキャピタル等投資動向調査報告」によると、ベンチャーキャピタルの新規投資のうち6割は東京に集中しています。これはベンチャービジネスのみならず、日本経済が東京一極集中をしていることに大きく影響していることとは思いますが、地域再生が大きな課題として存在する日本において、ベンチャービジネスを活用した地域雇用の創出、経済活性化にももう少し注目が集まってもいいのではないかと思われます。

 アメリカのシリコンバレーがニューヨークなど他の大都市圏と離れていることを鑑みるに、東京ではない日本のどこかにベンチャービジネス特区のようなものを設置することも1つのアイデアとして考えられるのではないかと思います。

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保田隆明氏のプロフィール

リーマン・ブラザーズ証券、UBS証券にてM&Aアドバイザリー、資金調達案件を担当。2004年春にソーシャルネットワーキングサイト運営会社を起業。同事業譲渡後、ベンチャーキャピタル業に従事。2006年1月よりワクワク経済研究所LLP代表パートナー。現在は、テレビなど各種メディアで株式・経済・金融に関するコメンテーターとして活動。著書:『図解 株式市場とM&A』(翔泳社)、『恋する株式投資入門』(青春出版社)、『投資事業組合とは何か』(共著:ダイヤモンド社)、『投資銀行青春白書』(ダイヤモンド社)、『OL涼子の株式ダイアリー―恋もストップ高!』(共著:幻冬舎)、『口コミ2.0〜正直マーケティングのすすめ〜』(共著:明日香出版社)、『M&A時代 企業価値のホントの考え方』(共著:ダイヤモンド社)『なぜ株式投資はもうからないのか』(ソフトバンク新書)。ブログはhttp://wkwk.tv/chou/


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