コラム
» 2007年08月17日 10時30分 UPDATE

科学なニュースとニュースの科学:二本足のサル 〜人類はどうして二足歩行するようになったか?

人間は直立二足歩行をすることで一気に進化したと言われていますが、ではどのように直立二足歩行をするようになったのかということについては諸説あります。そんな中、最近新たな2つの仮説が発表されました。

[堺三保,ITmedia]

 突然ですが、ヒトとサルの最大の違いはなんだと思います? 知能? 体毛の有無? それとも、直立して二本足で歩けるかどうか?

 直立二足歩行をするようになったことで、人類が一気に大きな進化を遂げたということは、よく言われていることだけど、どうやって二足歩行するようになったかについては、実のところ、いまだに諸説あって結論が出ていなかったりする。

 広く流布している説には、「森の中での樹上生活から、サバンナでの生活に環境が変わったため」という「サバンナ説」がある。

 その他にも、「幼形成熟(ネオテニー)によって体型が変化した」とする「ネオテニー説」や、「一時期、水中活動を中心とする生活を行なっていた時期があり、そのときに現在の直線的な体型を得て、二足歩行に移行した」とする「アクア説」等々、多くの説があるものの、どれも「これだ」という決め手に欠けているらしいのだ。

 そんな中、この6月と7月に、相次いで新たな仮説の証拠が見つかったという発表がおこなわれた。

イラスト

 1つめは、イギリスのバーミンガム大などからなる研究チームが、6月にアメリカの科学誌「Science」上で発表した「樹上生活起源説」。

 彼らは、インドネシアのスマトラ島で1年間、野生のオランウータンを観察し、樹上を移動する際、どのように体重を支えているかを分析したという。

 それによれば、オランウータンの移動の半数は腕で枝にぶら下がるというものだが(まあ、そりゃそうですわな)、13%はなんと二足歩行であり、特に太さ4センチ未満のたわみやすい枝を移動する時は、二足歩行の割合が22%と、四足歩行の16%を上回った。

 しかも、ここで言っている「二足歩行」とは、その9割以上が脚を伸ばした直立姿勢だったんだとか。

 この観察結果から、研究チームは、人類の祖先は、もともと樹上生活をしていた頃から二足歩行をする能力が備わっていたのではないか、というのである。

 てことは、「サバンナで生活するようになったから二足歩行するようになった」とするサバンナ説とは逆で、「二足歩行する能力を持っていたんで、サバンナの環境にも適応できた」ってことになる。

 さて、2つめは、アメリカのカリフォルニア大学デービス校などからなる研究チームが7月にアメリカの科学アカデミー紀要電子版に掲載した「省エネ説」。

 こっちのチームは、トレッドミル(スポーツジムに置いてあるランニングマシンみたいなもんです)を使って、ヒトとチンパンジーが同じ距離を歩くときの酸素摂取量を調べて、体重1キロあたりの量を計算、比較してみたんだとか。

 エネルギーの消費量が多いと、酸素の摂取量も増える(身体動かすには酸素が必須ですからね)ってわけで、たくさん酸素を吸ってるほうが、運動量が多いってこと。

 その結果、ヒトの二足歩行の「省エネ」度が一番高くて、酸素摂取量は平均でチンパンジーの4分の1程度だったとか。

 研究グループは「歩き方の違いが酸素摂取の違いにつながっている」と主張していて、つまりは「ヒトは楽な歩き方を模索しているうちに二足歩行を身につけた」と考えているんだとのこと。

 個人的には「樹上説」も「省エネ説」もいまいち説得力に欠ける気がするんだけど、皆さんはどう思います?

 というわけで、現時点では「二足歩行の起源」については、まだまだ分からないとしか言えないんだけど、わたしなんかは、だからこそ「科学はおもしろい」と思っちゃう。

 だって、答が分かってないことを、一生懸命べて、仮説を立てて、証明しようとして、ってことを繰り返しつつ、定説が間違っていることを見つけたり、新しい発見をしたりっていうことが、科学の醍醐味ってやつなんだよね。

 だから、「まだ答が見つかっていない」問題くらい、想像力を刺激してくれるものはないでしょ。違います?

堺三保氏のプロフィール

作家/脚本家/翻訳家/批評家。

1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。仕事一覧はURLを参照されたし。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。

ウェブサイトはhttp://www.kt.rim.or.jp/~m_sakai/、ブログは堺三保の「人生は四十一から」


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