コラム
» 2007年09月28日 12時00分 UPDATE

科学なニュースとニュースの科学:本当は怖い流れ星の話? 〜小惑星衝突の危険性はどれくらい?

つい先日、南米ペルーの荒野に隕石が落下してクレーターができ、発生したガスで住民に被害が出たというニュースが流れました。もっと大きな小天体が地球に落ちてきたら……と考えると心配になりませんか。

[堺三保,ITmedia]

 去る9月16日、南米はペルーの南部、プノ州の荒野で、突然できたクレーターからガスが発生、周辺住民約200人が頭痛や吐き気を訴える騒ぎがあった。

 このクレーターは、直径が約20メートルで、深さは約5メートル。底には泥水のようなものがたまっているとのこと。

 ペルー国営アンデス通信によると、地質鉱山冶金研究所の火山学者が、クレーターは隕石の落下によるものと確認したとのことで、地元のメディアも、15日に火の玉のようなものが落下するのを住民が目撃した、と報じている。またAFP通信によれば、地中の硫黄やヒ素などが、隕石落下に伴う高温で溶け、有毒ガス化したんじゃないかって見方が出ている。

 最初このニュースを読んだとき、筆者の脳裏をよぎったのは、映画化もされたマイクル・クライトンのSFパニック小説『アンドロメダ病原体』だった。古手の映画ファンやSFファンなら、同じことを思った人もけっこういるんじゃないだろうか。

 あの作品は、地球に落下してきた隕石に付着していた細菌が原因で、人々がバタバタ死んでしまって……という話だったんで、今回の事件とはちょっと違うわけだけど、それでも、隕石落下によってこんな事件が起こることもあるんだと思うと、ちょっとゾッとしたりした。

イラスト

 例えば、これがもし東京の真ん中、渋谷や新宿の交差点だったらと考えてみよう。たとえ何時であろうと、突然隕石が落ちてきて、直径20メートル、深さ5メートルの穴ができたとしたら、その被害はどれだけのものか、考えたくもない。

 もっとものすごい話になると、恐竜絶滅の原因として有力視されている説の1つが、巨大な彗星もしくは隕石の落下による環境の激変だったりする。そんな規模の災害を引き起こす巨大な隕石が今落ちてきたら、それが地球上のどこに落下しようと、世界全体の環境が激変、ヘタをするとそれこそ人類が絶滅しかねない。

 現実に、1994年の7月、木星にシューメーカー・レビー第9彗星が衝突するという事件が起こってて、その時は、木星の表面上に地球よりも大きな衝突のあとができてたりしたのを、覚えてる人もいるだろう。あんなのがもし地球とぶつかったら?

 この手の巨大天体との衝突ネタは、それこそSF小説や映画では定番のもので、古くは『地球最後の日』や『妖星ゴラス』、『メテオ』、ちょと前だと『アルマゲドン』『ディープ・インパクト』とメジャーな作品だけでもあっというまに何本も挙げられるんだけど、じゃあ、実際のところ、そういう危険性はどれくらいあるんだろうか?

 太陽系内には、地球や木星のような惑星や、そのまわりを回っている衛星以外にも、彗星や小惑星といった小さな天体が無数に存在している。小惑星なんかだと、なんと3万個以上が観測されてて、未観測のものを含めたらそれこそ何万個あるのか分からないらしい。

 そんな中でも、火星の軌道よりも内側の軌道をとおってるような、いわゆる地球近傍小惑星と呼ばれるものが、地球に衝突する可能性があるものだ。今のところは400個くらいが発見されているらしい。

 といっても、発見されてるものはどれも近い将来地球にぶつかる可能性はないってことだし、だいたいが、小さな天体の衝突なんて、実はそれこそ毎日のように起こってる。夜空を眺めてる人たちの目を楽しませてくれる、流れ星とか流星雨とかって、まさに隕石が落下してるところなんだから。

 問題は、まだ誰にも発見されていない小惑星が地球にぶつかる可能性は全然否定できないってことにある。天文学者たちによると、地球の軌道のそばには、直径1キロ以上の小惑星が2000個くらいはあるんじゃないかっていうんだよね。見つかってる小惑星はまだ400個だってのに!

 もちろん、過去の事例から考えて、小天体は毎月2、3回は地球に落ちてきてるけど、直径1キロ以上の小惑星が地球に衝突するなんてことは、100万年に数回程度しか起こってない(5キロ以上だと1000万年おきだとか)ってことだから、そう簡単にそんな大災害が起こるわけはないんだけど、でも、逆に言えば、これって人類はまだ経験してないだけで、絶対に起こっちゃうことでもあるんだよね。

 でまあ、それを未然に防ぐためには、何よりもまず、そういう危ない小惑星を見つけることが先決だっていうんで、近年、世界規模で行われ出したのが、「スペースガード計画」という小惑星や宇宙ゴミ(スペースデブリ)の観測計画だ。

 これは、1996年に設立されたNPO法人、スペースガード財団(The Spaceguard Foundation)(本拠地はイタリアのフラスカーティにある)を中心に、世界各国がそれぞれ観測所を設置して、天体観測をしているもので、日本でも日本スペースガード協会(JSGA)が、岡山県苫田郡鏡野町と岡山県井原市美星町のスペースガードセンターで、光学式および電波式観測装置を使って、観測を実施中だったりする。

※スペースガードセンターは財団法人日本宇宙フォーラムが建設し、運用経費は宇宙航空研究開発機構(JAXA)が負担している。

 とにかく、どんなに大きな小惑星が地球と衝突する軌道を描いてたって、何年も早めに発見しちゃえば、今の科学技術を駆使すればいくらでも対策は立てられるんじゃないの、って話なんだけど、いやまあ、実際問題はどうなんだろうねえ。なんせ、落ちてくることを考えたら、直径1キロの天体っていやあムチャクチャでかく感じるけど、星だと思えばケシ粒みたいなもん(だって、月の直径でさえ3476キロ、地球となると1万2742キロだもんね)だから、見つけるとなると大変だよね。

 いつ起こるか分からない大災害のことを、怖がってばかりいてもしょうがないんだけど、絶対あり得ないなんてバカにしちゃうのもダメな話なのも間違いない。

 スペースガード計画のがんばりに期待しつつ、これからは夜空を見あげて流れ星を見つけるたびに、「どうか小惑星が地球と衝突しませんように」って願いをかけてみてもいいかもよ(笑)。

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堺三保氏のプロフィール

作家/脚本家/翻訳家/批評家。

1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。仕事一覧はURLを参照されたし。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。

ウェブサイトはhttp://www.kt.rim.or.jp/~m_sakai/、ブログは堺三保の「人生は四十一から」


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