今年の初めから、「カエルツボカビ症」という奇妙な名称のニュースが時折流れているのに、お気づきの人も多いだろう。
カエルツボカビ症は、ツボカビの一種カエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)によって引き起こされる感染症で、カエルをはじめとする両生類だけがかかる病気で、感染した個体はほぼ確実に死に至るとされる。
じゃあ、このツボカビって何なのかというと、その名の通りカビ、すなわち真菌と呼ばれる植物の一種で、キチン、セルロース、ケラチンといった物質を栄養としていて、これらの物質を多く含むカエルの皮膚やオタマジャクシの口に感染するんだとか。身体にカビが生えちゃうわけだ。うう、エグい。
ちなみに、真菌というとカビだけじゃなくて、酵母とかキノコ類もみんなその一種なんだよね。
人間に感染する真菌もいろいろあって、中にはカンジダという種類の真菌みたいに、元々人間の身体の表面や腸内に普通に存在してるくせに、ときに感染症を引き起こしたりするものもある。
まあ、人間の場合は幸いなことに、命に関わるような真菌感染症はあんまりないけど。
さて、カエルのツボカビ症は、1990年代にオーストラリアでカエルの激減を招いた病気として、98年に初めて報告された。以後、米国や中南米、アフリカ、欧州などで相次いで流行が確認された。中米パナマでは両生類48種が感染し、個体数が9割減ったとされている。今やこの病気は、世界的な両生類の生息数および世界の両生類種の劇的な減少(すでに約3割の種が絶滅)に関連しているという。また、両生類の激減は、食物連鎖を破壊し、確実に生態系に打撃を与えていると考えられている。
この病気について、今年に入って日本でも報道が続いているのは、昨年末日本でもこのカビが発見されたからだ。
2006年12月、日本国内で初めて、飼育されているカエルからカエルツボカビが検出された。東京都内で個人がペットとして飼っていた中南米産のカエル11種35匹中、14匹が次々と死に、麻布大学での検査でツボカビ症と確認されたのだ。
これを受けて2007年1月、学会・研究機関・環境団体など16の団体による「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」が発表された。
3月には、沖縄県でペットショップで販売されている外来種のカエルからカエルツボカビが確認された。
6月、麻布大の研究チームはさらに「野生のウシガエル(外来種のカエルの1種)がツボカビに感染している事を確認した」と発表、警戒を呼びかけた。
そして、この11月、麻布大の研究チームは、国内の在来種のカエルもツボカビ症で死に至ることを実験で確認したというのだ。
ツボカビ症の恐怖が日本にもひたひたと迫ってきてるって感じでしょ。
なんせ、過激な記事では「全世界の両生類は絶滅しかけている」とまで書いて危機感を煽ってたりするからね。
この話の一番恐いところは、上でもちょっと書いたけど、両生類が絶滅するだけなんじゃなくて、その結果、食物連鎖が崩れて、生態系のバランスが激変し、他の生物にまで影響が出るかもしれないってところにある。
単純化して言ってしまえば、カエルがいなくなれば、カエルを主食にしてる動物たちだって餌がなくなって減っちゃうってこと。
また、その逆にカエルがいなくなっちゃうと、カエルが主食にしていた昆虫たちが大量発生して、例えば農業に大打撃を与えたりする可能性も出てくる。
要は、ドミノ倒しみたいに他の動植物にまで影響が出ちゃうってわけ。
もっとも、カエルの種類によっては感染しても発症しないこともあるし、日本国内の野生のカエルに対する影響については、まだまだわかってないことも多くて、他の国の例ほど心配する必要はないって説もあるんで、今のところはものすごいことにはまだなってないから、大騒ぎする必要はないんだけど、気をつけておくに越したことはない。
ご家庭でカエルを飼ってる皆さんは、ぜひとも以下のページを読んで、警戒と対応をお願いしておきたい。
作家/脚本家/翻訳家/批評家。
1963年、大阪生。関西大学大学院工学研究科電子工学専攻博士課程前期修了(工学修士)。NTTデータ通信に勤務中の1990年頃より執筆活動を始め、94年に文筆専業となる。得意なフィールドはSF、ミステリ等。アメリカのテレビドラマとコミックスについては特に詳しい。SF設定及びシナリオライターとして参加したテレビアニメ作品多数。最近の仕事では、『ダイ・ハード4.0』(翻訳:扶桑社)がある。仕事一覧はURLを参照されたし。2007年1月より、USCこと南カリフォルニア大学大学院映画学部のfilm productionコースに留学中。目標は日米両国で仕事ができる映像演出家。
ウェブサイトはhttp://www.kt.rim.or.jp/~m_sakai/、ブログは堺三保の「人生は四十一から」。
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