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» 2008年08月12日 15時27分 UPDATE

グルジアへのDoS攻撃は“サイバー戦争”か

ロシア政府が本当にグルジアの電子インフラを機能停止に追い込みたければ、今よりももっとはるかに確実な方法を採っていたであろう。

[Larry Seltzer,eWEEK]
eWEEK

 グルジアではロシア軍の攻撃を受けて大勢の人々が死亡している。一方では、サイバー戦争の可能性も報じられているが、その真偽はあまり定かではない。

 グルジアが目下ロシアの軍事攻撃を受けているのは確かだ。ロシアはグルジア国内の各地に爆弾を投下しており、あとどのくらいこの攻撃が続くのかは今のところ定かではない。

 また一方では、サイバー攻撃が発生中との報道もあるが、この点については状況はあまりはっきりしていない。悪名高いロシアのネット犯罪組織Russian Business Network(RBN)を追跡しているジャート・アーミン氏のRBN Blogによると、「今やRBNは国家の命を受けてグルジアのサイバースペースに侵攻している」という。このエントリーも含め、アーミン氏のブログはグルジア政府から直接入手した情報を利用している。

 一連の記事によると、グルジアの政府機関のサイトと重要インフラはDDoS(分散型サービス拒否)攻撃を受けてアクセス不能状態に陥ったという。RBN Blogではこれを「グルジアのサイバースペースに対する完全包囲攻撃」と呼び、「攻撃は成功した」と指摘している。アーミン氏は8月9日付で次のように書いている。「現在のところ、グルジア政府機関のすべてのWebサイトが米国、英国、フランス、ドイツなどのサイバースペースからアクセスできなくなっている」

 だがこうした主張に異議を唱える記事もあり、その言い分には一理あるようだ。わたしがまず指摘したいのは、グルジアの外務省に関する問題だ。同省は公式サイトが攻撃を受けた旨をRBN Blogを通じて発表した後、GoogleのBloggerサービスを使ってブログを開設している。だがわたしが8月11日にグルジア外務省の公式Webサイトにアクセスしてみたところ、何の問題もなく閲覧できた。RBN Blogでは、「グルジア政府機関の公式サイトを名乗るサイトの中には偽サイトも含まれている」と警告しているが、mfa.gov.geサイトは確かにRBN Blogを経由した場合と同じサイトになっているようだ。

 対グルジアのサイバー攻撃に関する分析の多くはネットワークマップや、グルジアのインターネットアクセスが世界のほかの地域とどのように接続しているかにフォーカスしたものになっている。RBN Blogでも同様の分析を行っているが、そのネットワークマップはまるでスパゲッティのように絡まっており、追跡は不可能だ。もっとずっと参考になるのが、データ分析会社Renesysによるブログでの分析だ。Renesysのブログは驚くべきことにサイバー攻撃との関連で石油輸送路の問題にも触れている。

 Renesysの分析によると、確かにサイバースペースでは大規模なアクセス不能状態が発生しているという。「ネットワークプレフィックスのうち最大35%がインターネットから消え、ときにはそれが長時間に及んだ。そして最大60%のプレフィックスが不安定だった」とRenesysは指摘している。それでも、こうしたアクセス不能状態はいずれも永続的なものではなく、それは交戦地帯にしては驚くべきことだという。

 エストニアに対するロシアのサイバー攻撃でその事後処理に大きく貢献したセキュリティ専門家のガディ・エブロン氏も、目下グルジアで起きていることはサイバー戦争と呼ぶべきレベルには達していないとの見方で一致している。「グルジアは確かにDDoS攻撃を受けており、実際それは政治的なものなのだろう。だが今のところは攻撃の余波がシンパによってオンラインに波及しているにすぎない。政治的緊張状態には、シンパによるオンラインでの攻撃が付き物だ」と同氏は指摘している

 エブロン氏、そしてわたしをそう納得させる背景には、「もしロシア政府が本当にグルジアの電子インフラを機能停止に追い込みたいのであれば、そしてそうした攻撃をRBNに実行させる力を本当に持っているのであれば、今よりももっとはるかに確実な方法を採っていたであろう」という思いがある。ロシアが本気で攻撃を仕掛ければ、ネットワークは完全に遮断されていただろう。今われわれが目の当たりにしているのは、むしろ比較的素人の手によるものに思える。

 この件に関するわたしの判断を誤解する人がいないことを願う。たとえロシアがグルジアに対して本格的なサイバー攻撃を仕掛けていたとしても、ロシアが実際の軍事攻撃で犯している罪と比べれば取るに足りないものだろう。現にわたしたちはロシア軍の攻撃で爆破されたアパートの様子や道路脇に置かれた死体の写真を見せられている。Washington Post紙が8月11日付で報じたように、たとえロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領の発言通り「グルジアでの軍事行動はほぼ完了した」のであったとしても、ロシアの非道ぶりは今後永遠に語り継がれるだろう。

 だが仕掛けようと思えば仕掛けられたはずのサイバー戦争をロシア政府が仕掛けなかったのだとしたら、それは一体なぜなのだろう? 実に興味深い問題だ。

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