コラム
» 2008年09月12日 14時49分 UPDATE

「GoogleによるUAL株価暴落」で浮き彫りになったWeb巡回ボット問題

6年前の新聞記事が誤ってGoogle Newsに表示され、UAL株が急落した。再発防止のためには何が必要なのか、専門家に聞いた。

[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 United Airlinesの親会社UALの破産申請について報じた2002年のChicago Tribune紙の記事が、9月8日のGoogle Newsに突然現れ、NASDAQ市場でUALの株価が12.50ドルから3ドルにまで急落した。幸い株価は9日には持ち直し、現在10.50ドルとなっている。

 Tribune紙はプレスリリースでこのハプニングについて説明。Googleもブログで説明している。

 Googleによると、ネット上のページを巡回してコンテンツをカタログ化する検索用のボットが9月6日、Tribuneの系列紙South Florida Sun-Sentinelのサイトの「Popular Stories: Business」というコーナーで、新しいリンクを発見した。

 この記事には、ここが重大なポイントなのだが日付がなかった。しかしSun-Sentinelのサイトでは記事の上のページ上部に「2008年9月7日(東部時間)」というその日の日付が記載されていた。Googleはブログで次のように釈明している。

 Sun-Sentinelは「Popular Stories」のコーナーでこの記事へのリンクを掲載し、記事ページ上で2008年9月7日という日付を提供していた。このためGoogle Newsアルゴリズムが新着記事としてこれをインデックス化した。当社はこの記事の掲載が手違いだと連絡を受けた時点で直ちに削除した。

 問題の記事はGoogle Newsサービスを通じて出回り、United Airlines関連記事のGoogle Newsアラートを設定しているユーザーに配信された。9月8日までには、金融ニュースサービスBloombergのユーザー向けに提供されている調査会社Income Securities Advisorsの投稿を通じて広まった。

 UAL株価は一気に急落した。問題はここにある。もし人間が株取引をしていてUAL株を急落させたのだったら売買人を責めるところだ。UAL株を追っている売買人なら日付がなくても過去の記事だと分かっただろう(そう願いたい)。急激な売りは避けられたはずだ。

 Sun-Sentinelがもし問題のTribune記事の出た日付を提供していたら、Google Newsの巡回プログラムに拾われることもなく、問題は避けられたかもしれないとの見方もある。

 そうかもしれないが、完全にそうとも言い切れない。Googleウォッチャーとして、そしてGoogle Alertsのユーザーとして、わたしは時おり何カ月も前の記事をGoogle Alertsで目にすることがある。しかしGoogleのヘビーユーザー(Google依存症と呼ばれることもある)であるわたしは過去の経験から、記事に日付がなくても古い記事と新しい記事を見分けられるだけの知識がある。

 しかし残念ながら、UALの問題を引き起こしたのは人間のトレーダーではなかった。Webを巡回して見出しと金融情報をもとにニュースを収集している検索巡回プログラムの一部が、即座に株取引を実行した。人間なら日付やUALの社歴といった付帯情報を考慮しただろうが、マシンでは検索の背後にある深い意味まではまだ解析できないようだ。

 GoogleとTribuneは責任をなすり付け合っている。Sun-Sentinelは記事にTribuneの日付を入れるべきだったとGoogleは言い、TribuneはGoogleのボットに責任があると主張。TribuneはGoogleに対して系列新聞のWebサイト巡回をやめるよう何カ月も前に要求したとしているが、Googleはこれを否定している。

 「TribuneがGoogleに対し、系列の新聞サイトの巡回をやめるよう要求したというのは事実と異なる」とGoogle広報はわたしに言った。

 そこで問題をはっきりさせるため、Search Engine Landのダニー・サリバン氏にコメントを求めた。同氏が語った内容は以下の通り。

 このようなことはこれまでにも起きており、わたしも個人的に目にしているが、これほど大きな騒ぎになったことはない。日付の明確化、ニュース検索エンジンとニュースサイトとの協力関係強化、そして特にフィードへの依存強化が助けになるだろう。しかし同時に、大手通信社に記事をフィードする前に人間が主要記事の基本的な事実関係をチェックしていれば助けになったはずだ。責任の90%はそこにある。

 IDCのスーザン・フェルドマン氏は独自の見方を語ってくれた。記事の日付(サリバン氏の言う通り、人間が付け加えることもできたはずだ)がなかったことが原因で「一連の出来事がすべてつまずき、翻って自動取引プログラムがつまずいた」と指摘し、次のように話している。

 人間なら不審に思ってこの種のミスに気付けるはずだが、コンピュータではそうプログラミングされていない限り、これができない。しかも正直に言って、不審に思って日付がないことに気付いた人間もあまり多くなかったようだ。こうして非常に人間的なうわさが介在し、人間の不注意でこの記事のランキングが上がった。このようなことは人間が互いに話すことを始めて以来、ずっと起こり続けている。Teapot Domeのスキャンダルや「宇宙戦争」騒ぎがいい例だ。どんなものであれ情報処理を自動化するアプローチの問題は、人間が定めた規則にコンピュータが従うということだ。日付をチェックしたり、人間に調べてもらう必要のある文書を抜き出したりする規則が定められていなければ、コンピュータは現在のものとして文書を処理し、そこからアラートが配信されて株取引問題を引き起こす。

 解決のためには新聞サイト、巡回ボット、自動売買プログラムを改善するとともに、タイミング悪く誤った情報を取得して悪い相手に届けてしまうことによる予期せぬ結果について、理解を深めることだとフェルドマン氏は言う。

 つまり必要なのは明らかに、よりスマートなアルゴリズムとよりスマートな巡回ボットであり、これはGoogleだけでなく自動売買ブローカーにも求められる。このような失敗を続けるわけにはいかない。そうなれば全米に活気を与える大動脈としてのウォール街に深刻な混乱を招くだろう。

 6年前の記事のせいでUALが受けた被害に目を向け、もし同じようなことがGoogleやMicrosoftに起きたらと想像してみることだ。

 そんなことがあればさらに大きな恥になるが、企業を動かして検索アルゴリズムを改善させるには、そのくらいのことが必要なのかもしれない。

原文へのリンク

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