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GoogleはFirefoxを生き延びさせない?

» 2008年11月21日 16時11分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 問題はGoogleがMozillaの息の根を止めるかどうかではない。いつ止めるかだ。

 わたしは理念としてのオープンソースを愛している。だが金は商売の潤滑油だ。そしてMozillaとFirefoxの開発を永らえさせているのはGoogleの金だ。eWEEKの同僚クリント・ボールトンは、MozillaがどれほどGoogleに依存しているかについていい記事を書いた。「Mozillaの資金の88%はGoogleから出ている。GoogleはMozillaに金を払ってFirefoxブラウザでデフォルトの検索エンジンになっている」

 Firefox 1.0がリリースされた2004年11月は、Googleが検索大手になるべく台頭してきた時期と一致する。検索関連の提携は、GoogleとMozillaの双方にとって幾つもの点で好都合だった。MicrosoftのInternet Explorer(IE)はMSNがデフォルトの検索エンジンになっていて、ブラウザ市場でのシェアは95%を超えていた(一部はIEとAOLクライアントの統合に起因する)。Googleはブランドとしての認知度は高かったが、検索で優位な地位を固めているとは言い難かった。comScoreによると、MozillaがFirefoxというブラウザの名称を採用した2004年初頭の時点でGoogleの検索シェアは36%だった。Yahoo!はシェア30%とわずかな差で追っていた。2005年2月までにGoogleの検索シェアはNielsen Onlineの統計で47%に達する。しかしGoogleで検索した人の58%が、最低でも1つは別の検索エンジンを訪れていた(大抵はYahoo!だった)。

 それから4年が経ち、様相は激変した。

  • FirefoxとAppleのSafariがIEの利用者を減少させた。しかもMicrosoftが何年もの間ブラウザ開発の手を抜き、後に不安定で中途半端にしか標準に準拠していないアップグレードをリリースするという過ちを犯したことも、IEの利用減少に拍車を掛けた。Net Applicationsによると、現在(つまり今日)までの1年でIE 8のシェアは約73%。2年前の11月はIEのシェアは81%だった
  • Googleは2番目(Firefox)と3番目(Safari)に利用者が多いブラウザで、デフォルトの検索エンジンになっている
  • Googleは検索シェアで圧倒的リードを誇る――世界のデスクトップPCとモバイルWebブラウザで60%強
  • Googleはバンドル提携を通じ、人気Webサービスや新しいPCの多くでデフォルト検索エンジンになっている

 しかしIEの独占はまだ続いている。Googleはこの問題を何とかしたくてたまらない。クリントは次のように書いた。

 わずか数年で、Mozillaはほかのどの競合ブラウザにもできなかったことを成し遂げた。IEからシェアを奪ったのだ。Googleは、その資金を使って今後もMozillaにMicrosoftからシェアを奪わせ続けるとあなたは思うかもしれない(一方では世界第2位の人気ブラウザで検索ボックスをホスティングする見返りに膨大なトラフィックを獲得できる)。しかし現在のペースでいくと、それには20年ほどはかかりそうだ。Chromeの登場は、GoogleがMicrosoftに対して二刀流のブラウザ攻撃を仕掛けたがっているのか、あるいはMozillaがやったようなやり方でChromeがシェアを獲得するまでの代理としてFirefoxを利用しているかのどちらかを意味する。

 Googleは9月初めにChromeブラウザのβ版をリリースした。その後2カ月たっても、Chromeの利用シェアはわずか0.17%にすぎない。Chromeの前にさまざまなブラウザが乱立している状況を考えれば、そのことに意外性はない。IEに到達するにはFirefoxとSafariを抜くしかない。IEから簡単に乗り換えるユーザーは、大部分が既に2つの主要代替ブラウザに乗り換え済みだ。

 わたしが9月初旬にブログに書いた通り、「MicrosoftはGoogleがFirefoxを、そして恐らくSafariをも追い落としてくれたと感謝するかもしれない」。Googleがブラウザに抱く野心は相当なものだ。そうでなければMozillaとの関係を強化し、オープンソースのFirefoxを拡張していたはずだ。Mozillaは、GoogleがMicrosoftに到達するために征服しなければならない地盤なのだ。

 そこに到達するためGoogleがしなければならないことは以下の通り。

  • 普及促進に向けた第一歩として、Linux版とMac版のChromeをリリースする
  • 開発者に金をちらつかせる。つまり、Googleが検索で得た利益で開発者にアプリケーション、プラグイン、サービスを開発してもらうことになるかもしれない。Chromeには優れたプラグインが必要だ
  • Gmailでやったのと同じことをChromeでもやる。すなわちモジュール式の改善と新機能追加を繰り返す
  • Chromeの売り込み。まず手始めとなるのがAndroid搭載携帯とのタイアップであり、これはT-Mobile G1で直ちに実現した。携帯電話でブランドに親しんでもらえれば、デスクトップでも採用してもらえる可能性がある
  • Microsoftのやり方に習い、Chromeユーザーのメリットを増やす。Googleサービスはほかのブラウザでも極めて良好でなければならないが、Chromeでは本当に素晴らしいものにする必要がある

 ただしGoogleがFirefoxの地盤に食い込むのは慎重にやらなければならない。オープンソースであるFirefoxは、Webブラウザであると同時に宗教でもある。GoogleはFirefoxの追い落としでコミュニティーの怒りを買うことは望んでいない。前面に押し出すべきは、悪の帝国としてのMicrosoftと肥大化し過ぎたIEだ。

 わたしはFirefoxが大好きだ。これは極めて高速かつ安定したブラウザだ。ところがMozillaがGoogleの検索収入に依存してきたという醜聞が発覚した。オープンソースのサクセスストーリーは、コミュニティー参加と同じくらい、商売絡みの金銭に支えられていたのだ。わたしの予想では、Firefoxはいずれ失敗する。Mozillaがさらに資金提供者を集めるか、オープンソースコミュニティーの手にブラウザを戻さない限りは。小数の人々が集まれば素晴らしい仕事ができるということは、Wikipediaで実証されている。1〜2%でも、65億人の人数を掛ければ膨大な数になるのだ。

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