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» 2007年02月16日 19時00分 UPDATE

ビジネスシーンで気になる法律問題:「Second Life」でゲーム内通貨を米ドルに換金――出資法に抵触する? (1/2)

オンライン上のゲームやショッピングでは数多くのポイントサービスが利用できる。こうしたポイントの中には、現金に換金できるものもあるようだ。現行法に抵触するかどうか、確認していこう。

[情報ネットワーク法学会, 中崎尚,ITmedia]

 オンラインゲームの国内RMT(Real Money Trade)市場規模は一説には150億円にも迫るという。それを図らずも実証したのが、2006年11月にオンラインゲーム「リネージュII」の通貨やアイテム販売で多額の売り上げを上げていた留学生が出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで逮捕された事件である。トータルでは約1億5000万円の荒稼ぎとも報じられた。

 反面、法律ではオンラインゲームのようなバーチャルワールドどころか、インターネット上の経済取引でさえも完全にカバーできているとはいい難い。どうして規制が難しいのか、どのような規制が必要なのか、本連載を通じて考えてみよう。

決済サービス、消費者保護の法律は?

 インターネット上で金銭が絡んだ経済取引を行う場合、どこかで決済サービスを利用しなければならない。この決済サービスの担い手は、今や、銀行やクレジットカード会社など金融行政のコントロールを受ける機関のみならず、電子マネー発行会社にまで広がっている。インターネット上の仮想空間に止まらずリアルワールドにおいても、Edyや航空各社のマイレージ、複数事業者で利用可能な共通ポイントのように新たな一般消費者向けの決済ないし類似のサービスが広く提供されるようになっている。

 一般事業者が、「決済性のあるサービス」を消費者に提供する場合、これに見合う法規制が用意されていないことが多い。適切な規制がないまま決済サービスが広く普及していくとすれば、1)不十分な消費者保護、2)安定性を欠き経済取引基盤としては不適切、3)マネーロンダリングへの悪用、4)規制下で決済サービスを提供する既存事業者との不均衡、5)国家の通貨発行権の侵害――などの事態につながるのではないかという懸念が指摘されている。

 消費者向けに提供される決済性のあるサービスへの規制手段となり得る法律は「前払式証票の規制等に関する法律(プリカ法)」をはじめ、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」、銀行法、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」、紙幣類似証券取締法、マネーロンダリング関連の法令などいくつもある。ここではバーチャルワールドの経済取引に将来関連しそうな法令をいくつかピックアップして見てみよう。

決済性のあるサービスとは?

広く一般の製品やサービスの対価として支払われる電子マネーと比べると、各事業者が発行するポイントは特定の製品やサービスとの引き換えに「交換」できるものだった。しかし、現状では各事業者のポイントサービスが共通化され、ポイント交換の対象である製品やサービスの範囲が拡大している。こうした現状を踏まえ本稿では電子マネーとポイントサービスを中心に、消費者が対価を支払うための仕組みを提供するサービスを「決済性のあるサービス」と呼んでいる。


プリカ法、物理的な証票の有無が問題に

 あまり聞き慣れないかもしれないが、プリカ法はもともと名前の通りプリペイドカードビジネスが適正に行われるように制定された法律だ。電子マネーの登場という時代の流れに応じて、この法律は「前払式証票」(いわゆるプリペイドカード)に該当するもの、例えばICチップを搭載したカード型の電子マネーなどにも適用されると考えられている。

 プリカ法の規制内容は、発行事業者に一定の財産規模を義務づける参入規制、証票上にその内容を表示することを義務づける開示規制、未使用残高の2分の1に相当する保証金の供託義務の3つの制度が柱。事業者が破綻した場合でも、一定限度は購入者に返還されるよう制度設計されており、この範囲内で消費者保護が図られている。

 従来の議論では物理的な「証票」の有無が、プリカ法が適用されるか否かの決め手となるとされてきた。例えば、Edyは物理的なカードや端末が「証票」となる。ちなみに発行者以外のサービスなどに使用できるので「第三者発行型前払式証票」に分類されている。

 問題になっているのは、完全にオンラインのサーバ上で管理するタイプの電子マネーシステムだ。この場合は「証票」に当たるものがなく適用がないとされている。オンラインゲームのようなバーチャルワールド内の経済取引においても、物理的な「証票」に相当し得る存在がないため適用されないと考えられるのである。

サーバ上だけで管理するタイプの電子マネーシステムって?

サービス提供者が管理するサーバ内に記録されるタイプの電子マネー。ネットショッピングやオンラインゲームなど、インターネット上の決済に用いられる“プリペイド”マネーの多くはこのタイプである。


ゲーム内通貨の現金払い戻しは可能なの――出資法

 投資名目など詐欺事件摘発の報道でも「出資法違反(預り金禁止)容疑で逮捕」という文脈で、しばしば耳にする「出資法」。バーチャルワールドとの関係でいえば、一般的に金銭を受入れた者(オンラインゲームであれば、ゲームの運営会社)によって元本の返還が約束されている場合は、いわゆる「預り金」と同様の経済的性質を有するものに該当する可能性が高く、出資法に抵触する恐れもある。

 この「預り金」とは、不特定かつ多数の者から受け入れた金銭のことで、銀行預金と同様の経済的性質を持っていると考えていい(出資法2条2項)。こうした関係もあって、従来、オンラインゲーム内通貨の現金払い戻しを約款上不可能とすることで、出資法に抵触することを回避してきた。

 ちなみに「預金などと同様の経済的性質」とは、1)元本の返還を約束する金銭の受入れで、2)金銭の価値または価額の保管を目的として、主に金銭を提供した者の便宜のためになされる――と解釈されている(大阪地方裁判所平成13年9月14日判決)。

 日本進出が発表され注目を集めている「Second Life」では、本国ではゲーム内通貨(リンデンドル)を米ドルに換金するサービスを運営者が提供している。日本向けサービスでの取り扱いがどうなるか――興味深いところだ。

st_se01.jpg Second Lifeでは、ゲーム内通貨である「リンデンドル」を米ドルに換金できる
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