2007年を振り返るBiz.IDセブン──斎藤健二

2007年に実際に活用できた、手帳やデジタルグッズ、書籍などを振り返ってもらう年末年始企画。Biz.IDセブンの最後は、「思ったほど本を読めなかった……」というBiz.IDの斎藤健二記者が振り返ります。

» 2008年01月03日 02時05分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

2007年、お金を払った、または払ってもいい、と思ったWebサービスは?

 2007年は、Web上でシゴトができるツールが急速に普及した年でした。「Flickr」はProアカウントを購入しましたし、「Skype」もPro契約を買いました。Flickr Proはアップロード無制限。今や、撮影した画像はすべてFlickrにアップしています。

 Flickr用ツールで便利だったのものが2つ。いずれもGreasemonkeyスクリプトです。1つは「Flickr Link Original Images」とダウンロード支援拡張機能「DownThemAll!」の組み合わせ。Flickrに限らずネットの画像アップロードサービスは、“元画像を取り出したい”ときに不便なのが玉に瑕だが、この2つを組み合わせると簡単にオリジナルサイズの画像をまとめてダウンロードできる。Lifehackerの翻訳記事に詳細が書いてあるので参照のこと。

 もう1つは「Quickr Flickr」。こちらはFlickrの今1つ分かりにくいUIを改良してくれるものだ。

2007年、お金を払ったグッズについて教えてください

 あまりこれというものを買わなかった1年だったが、激しくヒットだったのが、コクヨの「ドットライナーパワー」。接着剤はとにかく強力なのが好きで、開けようにもびくともしない強さがほしい。一方で、手に付いてしまったり、机にはみ出してベタベタになってしまうのはイヤだ。

 これをうまく解決してくれたのが、このドットライナー パワー。木材や金属にも使える──というウリ文句通り超強力。紙を貼り合わせるのに使ったら、一瞬でピタっと貼り合わさる。それでいて使い勝手は、定評のドットライナーと同等だ。

 しかし、文具店などの扱いがあまりないのが玉に瑕。Amazonでも交換用テープはなかった。そこでお勧めなのが「ぽちっとアスクル」。事務用品の通販サイトで有名なアスクルが、SOHOや家庭向けに始めたサイトだ。ここでなら、こうしたマニアックな文具も容易に手に入る。

2007年に読んだ本で、お勧めしたいものは?

 2007年に読んだ本を振り返ると192冊(本は読み終わると表紙を撮影するようにしているので、しっかり振り返ることができる)。1日1冊という目標には達しなかったが、だいたい営業日に1冊程度は読めたようだ。しかし改めて見返すと、しょーもない本も多く、有意義な時間の使い方に向けて自戒の念を持つ。

天才数学者はこう賭ける なぜか寿司屋でイカを食べながら読んだことを覚えている1冊。「有利な賭けが投資と呼ばれ、不利な賭けがギャンブルと呼ばれる」。この本は投資(そしてギャンブル)に関する数学的な歴史をひもとくものだ。100円を賭けて勝ったら次も100円を賭ける。もし負けたら次は200円を賭ける。それで負けたらさらに倍の400円を賭ける──マーチンゲール方式と言われるこの賭け方を知っている人は多いだろう。では、ケリー方式はご存じだろうか。統計学の歴史とともに、投資の考え方についても示唆を含む1冊だ。ここで統計の不思議さに目覚めたら『宇宙をデコードする』もお勧めだ。

 本書の中で、「サンクトペテルブルグの賭け」と呼ばれるものが紹介されている。硬貨をはじき表が出るまで続ける。最初に表が出れば金貨1枚、2回目に出たら2枚、3回目なら4枚、4回目なら8枚がもらえる。さてこの賭けの期待値は? そしてあなたは参加するのに金貨何枚なら払うだろう?

人類最後のタブー “自然”という語を善の同意語と理解する一方で、不自然、人工、合成には反射的に負の反応を示す。知らず知らず、こんな考え方をしていないだろうか。遺伝子研究の最前線に立つ筆者が、霊魂から遺伝子まで根本から見直しを迫る1冊だ。

 「防腐剤を含まず、合成香料や着色剤を使用しない食品を求める一方で、ベンゼンやホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、スチレン、トルエンが入っていることを知らずにカフェラテを飲む」。──有機栽培されたコーヒーやコショウなどに含まれる天然化学物質について述べた一節だ。自然とは何かを改めて考えさせることは間違いない。

ライフサイクル イノベーション 『キャズム』で知られるジェフリー・ムーアの1冊。Biz.IDでもイノベーションに関する連載を開始した2007年だが、日本でも今後ますますイノベーションを起こすことの重要性が高まるに違いない。

 本書では業界の状況や自社の状況に応じて、どんなイノベーション作戦を採るのが最良かを分類していく。トヨタが実施したイノベーションへの取り組みが、ベンチャー企業にも効果があるとは限らない。その逆もしかり。豊富な実例を元に、自分の立ち位置に適したイノベーションの方向性を示唆してくれる。特にコモディティ化が進む市場でのイノベーションのあり方には、バイブルと言われるようになるだろう。

グラミンフォンという奇跡 「以前はビジネスやファイナンスは退屈で、金儲けのためだけにあると考えていた。……だが、いまや彼は、ビジネスとは問題解決の方法だと認識するようになった」。これはバングラデシュへの携帯電話サービス導入を目指した1人の男、イクバル・カディーアの物語だ。

 「ここはバングラデシュだ。みな食べるものにも不自由している。電話を使って何をするのだ」。当初はこう言われたカディーア。しかし彼は“つながることは生産性である”という信念の元、携帯電話事業を成功に導く。それだけでなく、発展途上国で普及した携帯電話は、これまで銀行口座も持っていなかった人たちに、いきなりモバイルバンキングという手段を与えることにもなる。先進国よりも遙かに“モバイル”で生きている途上国。あまり情報が出てこないそうした先端のモバイル環境に触れるテキストでもあった。

デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術 最後の1冊は、Business Media 誠の連載陣でもある保田隆明氏が自身のキャリアへの考え方を綴ったエッセイ。自分なりに心に響くフレーズが多かったので、いくつか引用しておこう。

 「組織に文句があるのであれば、辞めるかそれを改善するか、どちらかの行動を起こすべきであり、ただ文句を言っているだけの人間は有害でしかないということです」

 「あなたが優秀であれば、会社はあなたを必要とし、いい給与を与えてくれるはずです。しかしそれは一種の飼い殺しにもなりかねません。給与と役職が上がるにつれて私たちは牙を抜かれていき、気がつくとその会社でしか通用しない人間になってしまうのです」

 「転職したての人や新卒を見てみよう! チャレンジしようとしている人にとっては、世の中のチャンスが、リスクよりもたくさん見えます」

 保田氏は「やりたいことは『好きか嫌いか』から考えよう」とも言っている。10年後の自分の姿を思い描いて、その目標に向かって邁進するやり方もあるが、敢えてそうした目標を持たず、毎日の方向性についてのチョイスを繰り返しているうちに正しいところへたどり着くという考え方だ。Biz.IDで連載している平本先生が言う「価値観型」に近いだろう。つくづく(自分も含めて)日本人にはこちらのほうが合っていると思う。


 さて2007年末で、Biz.IDは1歳半になりました。デジタル仕事術サイトとして、また個人だけでなく中小企業のビジネスの応援サイトとして、一層の成長を成し遂げることができました。2008年も続々と新しい企画をお届けしたいと思ってます。

 最後に2007年に取り組んだ新企画をざっと一覧して、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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