多かれ少なかれ、仕事とは組織で行うものである。そうなると、自分がGTDを実践している場合、GTDを実践していない人にイライラしてくるようになる。ほかの人にもGTDを進め、実践してもらうことができれば、もっと効果的に仕事ができるはずである。GTDをほかの人に実践してもらうための方法をデビッドさんに聞いた。
「いい質問です。正直に言うと最善の方法はまだ見つかっていません。ただ、いくつかの方法はあります。まずGTDは実際のところ、うまく行くやり方を引き出すための一連の質問だと理解してもらう必要があります」
例えばGTDで行う「収集」というプロセスは「あなたが頭の中に抱えているやりかけの仕事は何か?」という質問に答える作業である。組織でGTDを実践する効果的な方法の1つは、こうした質問をGTDのプロセスに沿って行っていくことであるという。
「このミーティングでやるべきことは何ですか?」「次に行うアクションは何か?」「どのようにレビューをしていくべきか?」
こうした質問を続けていくことにより、自然とチームがGTDを実践できるようになる。
GTDの本を読んでください──ではなかなか人は動かない。GTDの原理原則を理解し、その考え方を質問によって広めていくことが大事だという。「GTDの原理原則は個人にも組織にも同じようにあてはまります。ただ、組織の場合に気をつけることが1つあります。それは誰がタスクを所有するかをはっきりさせなくてはならない、という点です」
組織でGTDを実践する場合、誰がどの行動を担当するのかを意識させる必要がある。その工夫さえ忘れなければ、GTDを組織で実践していくことも可能だという。
「あるクライアントに『GTDマーク』を作ったらどうか、といわれたことがあります。この企業ではGTDを実践しています、と認可するマークを広めれば、GTDを実践している人がGTDを実践しない人にイライラすることがなくなりますからね(笑)」
GTDでは週次レビューを続けることが必要である。そうしないと、一度頭の中から「やりかけの仕事」を取り除いたとしてもまた次々と現れる「やるべきこと」で頭の中が一杯になり、ストレスがたまっていくからだ。ただ、この週次レビューを続けるのが難しい人もいる。デビッドさんはどのようにしてレビューを続けているのだろうか。
「週次レビューはある意味、歯磨きと同じです。歯を磨いていないと気分が悪くなりますよね。だから人は1日に数回歯磨きをしてすっきりします。週次レビューも一緒です。週次レビューをしていない状態、つまり頭の中に『やりかけの仕事』がたまっている状態を気分が悪い、と意識することから始めてください」
人は歯を磨けばすっきりすることを知っている。しかし仕事で抱えているストレスをすっきりさせる方法を知らない人が多い。週次レビューを実践することでいつでも仕事のストレスを取り除くことができる、と理解することが大事なのだ。
「また別の方法としては、GTDを実践している人たちの近くにいることがあげられます。GTDを実践しているかどうかは実践している人には一目瞭然(りょうぜん)です。そうした人々と接することで自分もGTDを実践し続けることができるようになります。ただ、そうした人が近くにいない人も多いでしょう。その場合は、私の本やブログ(GTDTimes.com)を読むことでGTDを常に意識するといいでしょう。私のオーディオCDを聞いて意識を高めている人も多いですね」
仕事をしていると緊急の仕事が降ってくることもある。そうした緊急の仕事に対処するためにGTDは使えるのだろうか。「最初に言っておくと、緊急の仕事が降ってくることを防ぐことはできません。ただ、そうした仕事が降ってきたときにGTDを実践しているかどうかで大きな違いが出てきます」
GTDを実践している状態とは、先にも述べたとおり、頭の中に雑念がない状態、または雑念があったとしてもその雑念を取り除く方法を知っている状態である。そうした状態なら緊急事態が降ってきたとしても、今やっていることを頭の外にいったん追い出し、緊急の仕事に落ち着いて対処することができる。
逆にGTDを実践していない場合、常にやるべきことで頭の中が一杯なので、緊急の仕事に直面すると不必要なストレスがぐっと高まることになる。「すぐにやらなくちゃいけないことがあるのに、『あれもこれもやらなくちゃ』と感じていては落ち着いて対処できないですよね」とデビッドさん。
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