相手を説得したいときには、「なんで自分たちの気持ちを分かってくれないんだ」などとは思わずに、まず、その人がどういうときに大変なのかを考えてほしいのです。相手が経理なら次のようになります。
経理は月末や決算の時期は大変だろうな、途中で数字が変わったら大変だろうな、というように考えられますね。
次に、「今の時期は大変でしょう。こういうときも大変だろうね。自分たちのせいで、計算が変わると大変だよね」と、相手の立場に立って、実際に経理の人に言ってあげてください。「そこまで大変じゃないですよ」と相手が恐縮するくらい言っていい(笑)。
その上で、「自分たちにできること、これだけはやめてほしいことは?」と聞きます。すると、いろいろ出てくるでしょう。まずは相手の立場に立って、相手のニーズを満たします。
最後に、「営業としても、こういうときは経理の人にがんばってもらえると、すごく助かる」と自分たちの要求を伝えます。相手の立場に立って、相手のニーズを満たしてから、自分の要求を伝える、という手順の方が気持ちが伝わります。
ところが、大抵は順番が逆なんですね。おまけに、相手の不満を聞いていると腹立たしい気持ちにもなります。
そんなときこそ、「いや、本当にそうだ。本当に申し訳ない。本当に自分たちが悪いよ」と、徹底的に相手の立場になってください。
くれぐれも逆切れはしないでください。ここで、「そうは言っても、キミたちもさ……」となると、要求が通らないまま喧嘩になってしまいます。
腹が立ったときは目的を思い出してほしいのです。目的は、自分たちにとって都合のいいことを、相手に気持ちよくやってもらうことで、相手に報復することではありません。目的を達成するためだったら、白旗を振ってあげてほしいですね。
これはビジネスでゲームではありません。相手が気持ちよく、しかも永続的にこちらの意図することをやってくれて、それによって利益が上がることが目的ですから、メンツを気にする必要はないのです。
相手の立場に立って共感してあげると、相手が生まれ変わったように協力的になることもあります。例えば、20人の営業マンみんなが文句を言っているのに、たった1人でも経理の気持ちを分かってあげたら、すべての経理は、その営業の人を全力でサポートしてくれるでしょう。
次回は最終回。説得の仕上げに必要なプラスアルファなどを見ていきます。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本相武(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.