その8 大々的にテレビCMを始めたライバル企業ビジネス力1分間トレーニング

堅実経営がモットーの矢崎化学。地味な会社なので若手社員からは、女の子にモテないと不評です。ある日、競合他社が、大々的にテレビ広告をはじめました。競合の若手社員が合コンでモテはじめたというウワサも聞こえてきます。さてあなたなら、どう判断しますか?

» 2008年09月02日 08時30分 公開
[西村克己,ITmedia]

Question

 矢崎化学は年商100億円規模で、堅実経営がモットーです。しかし若手社員たちからは、地味な会社で女の子にモテないと不評です。

 そんなある日、競合で同規模の南野化学が、大々的にテレビ広告をはじめました。営業の話によると、10億円以上をかけて広告しているそうです。またテレビ広告効果で、南野化学の若手社員が合コンでモテはじめたというウワサも増えてきました。

 さて、あなたはこの状況からどう判断しますか?(複数回答可)

  1. 競合に負けないために当社も知名度アップ(追随)
  2. 若手社員の活性化、新入社員募集に絶大な効果(追随)
  3. 売上の10%以上を超える広告は無理(追随しない)
  4. 同規模の南野化学は相当無理をしている(追随しない)

Answer

今回の問題は『経営戦略1分間トレーニング』の19問目から出題

 知名度アップだけでは売上は伸びません。テレビ広告では知名度はアップしますが、莫大な広告費が必要です。

 (1)の知名度アップ、(2)の社員の活性化程度では、投資対効果の見極めが不十分です。(3)の過大な広告費投資、(4)の競合は無理をしているという判断の方が賢明でしょう。正答例は(3)(4)です。

解説:勝利するための5つの条件

 孫子は勝利するための極意を5つあげています。勝利を知りうる5つの条件とは、(1)戦うべきと戦うべきでないとを、理解していれば勝つ、(2)兵の多い方が勝つことを知り、用兵すれば勝つ、(3)部隊の上級も下級も、等しく戦意を持っていれば勝つ、(4)備えありをもって備えなきを待てば勝つ、(5)指揮官が有能であり、君主が指図しなければ勝つ――です。いつも戦おうとすると、兵は疲弊します。日ごろから力を蓄えれば、いざというときに全力が発揮できます。

 たとえば、新規事業をやるには、かなりの経営資源が必要になります。新規事業にばかり気をとられていると、必要以上の消耗戦を強いられることがあります。新規事業でよく聞く話は、「3年前から新規事業をがんばっているが、なかなか黒字のめどが立たない」というものです。

 新規事業をやるか、やらないかの意思決定も、「戦うべきと、戦うべきではないことを理解していれば勝つ」で、いま戦うべき時なのかを自問自答すべきでしょう。たとえば本業で赤字続きなのに、新規事業をやろうとすると、命取りになるかもしれません。

著者紹介 西村克己(にしむら・かつみ)

 岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。1982年東京工業大学経営工学科大学院修士課程終了。富士写真フイルムを経て、1990年に日本総合研究所に移り、主任研究員として民間企業のコンサルティング、講演会、社員研修を多数手がける。2003年より芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授。専門分野は、MOT(技術経営)、プロジェクトマネジメント、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考。

 主な著書に、『経営戦略のトリセツ』『よくわかるプロジェクトマネジメント』『図解する思考法』(日本実業出版社)、『戦略構想力が身につく入門テキスト』『論理的な考え方が面白いほど身につく本』『論理的な文章の書き方が面白いほど身につく本』(中経出版)、『戦略思考トレーニング』『論理的な考え方が身につく本』『論理的な話し方が身につく本』(PHP研究所)、『スピード仕事術』『戦略経営に生かす兵法入門』(東洋経済新報社)、『脳を鍛えるやさしいパズル』(成美出版)など、約60冊。



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