タブバーに見る“Google Chromeの設計思想”(1/2 ページ)

GoogleのWebブラウザ「Google Chrome」には、タイトルバーがなくタブバーが画面最上部にある。IEやFirefoxはアドレスバーの下にあるが、Operaのタブバーはアドレスバーの上に配置されている。それぞれ異なるUIの背景には、ブラウザごとの“設計思想”があった。

» 2008年09月09日 11時30分 公開
[杉本吏,ITmedia]

 Googleがリリースしたことで大きな話題となったWebブラウザ「Google Chrome」。1日でシェアの1%を獲得したという調査結果が発表されたり、利用規約の一部が問題になったりと、リリース後数日経っても話題には事欠かない。実際に使ってみた人はどのような感想を持っただろうか。


Google Chromeのタブの位置、便利?

 Google Chromeをダウンロードした多くのユーザーとおそらくは同じように、筆者もここ数日はほかのブラウザと併用しながら使用感を試している。Gmailはさくさく表示してくれるし、テキストエリアを自由に拡大縮小できるなど便利な機能もあって楽しいのだが、ちょっと手こずっているのがタブの切り替え動作だ。

 これまで使ってきたブラウザでは、マウスジェスチャでタブを切り替えていたのだが、Google Chromeではマウスジェスチャは使えない。慣れてしまえば、[Ctrl]+[Tab]のキーボードショートカットを使うのが一番早いだろうが、マウスカーソルをタブのところに持っていっていちいちクリックして切り替えることも多い。

 これがGoogle Chromeでは少々面倒なのだ。FirefoxやInternet Explorer(IE)ではタブはアドレスバーやツールバーの下にあるのだが、Google Chromeの場合はタブをウィンドウの一番上に配置している。マウスカーソルを動かす距離にすれば、たかだか数十ピクセルの差だろうが、ページ表示領域のすぐ上に「ある」と思ったタブが「ない」のは、何度も繰り返すとけっこうストレスを感じるものだ。

Google Chrome(左)とIE 8(右)の比較。マウスカーソルの移動距離にしてみればほんの少しの差だが……

 Google Chromeがこうした独自のユーザーインタフェースを採用したことには、どのような狙いがあったのだろうか。

フレームを意識させないために“むきだしでタブを置く”

 米Googleエンジニアリング・ディレクターのライナス・アプソン氏によると、Webブラウザの世界で“chrome”と言えばウィンドウのタイトルバーやツールバーのことを指す。タイトルバーなどを取り払い、タブを一番上にむき出しで置くことで、ユーザーに“chrome”を意識させない――というデザイン上の意図があったようだ。chromeを外したのにあえて“Google Chrome”と名付けたのは「皮肉っぽいネーミング」(同氏)。

 また、タブの1つ1つにツールボタンやOmnibox(オムニボックス:アドレスバーと検索バーを統合した「多機能ワンボックス」の通称)を入れ込んだようなデザインにすることで、各タブが独立したプロセスで動いているイメージを喚起する効果も狙っている。

 フレームがないGoogle Chromeのページ表示領域は確かに広い。他ブラウザのように[F11]キー一発で全画面表示する、といった機能こそないが、[Ctrl]+[B]でブックマークバーのオン/オフを簡単に切り替えられるなど、とにかくページを広く見せようという意図が感じられる。

 タブをドラッグ&ドロップするような動作で別ウィンドウを開いたり、すでに開いているウィンドウ間でのタブ移動もスムーズだ。タブバーを最上段に置いて目立たせることは、こうしたGoogle Chromeの機能を、ユーザーに直感的に使用してもらうための工夫なのかもしれない。

タブをドラッグしてウィンドウ外にドロップすると(右)別ウィンドウとして開く。同じようにしてウィンドウ内にドロップすれば、再び統合することも可能だ

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