「紙でもなくネットブックでもなくポメラ」の理由樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

ポメラの起動が早いため、筆者の発想入力プロセスにおいて書き漏らしていたことも埋められるようになった。例えば、会話文を思いついた時だ。

» 2009年01月30日 17時30分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 本体を開き、左横下のボタンを押して、フルキーボードを開き、拡げて固定して、電源ボタンを押したまま数秒――これで入力準備OK。ここまで時間にして約8秒だ。キングジムの「ポメラ」である。

 現在、360グラムのポメラを常時携帯して、アイデアマラソンと執筆に活用している。ポメラの起動が早いため、筆者の発想入力プロセスにおいて書き漏らしていたことも埋められるようになった。

 通常、アイデアマラソンではA5の紙のノートを使う。ノートを広げられる環境なら、室内でも、車内でも、機内でも、喫茶店でも、思いついた発想、タイトル、キーワードなどを急ぎ書き留める。これらの書き入れる発想は、キーワード程度の長さのものに限っていた。

 だがキーワードを超えて、ちょっとした気の利いた文章や文節になっている発想もある。今までは、ちょっと長めの発想は書き留めるのが面倒になって、短いキーワードに変更したり省略したりして、ノートに書き留めていたのだ。

 例えば、

 「ネットブックを広げて手のひらに乗せたまま、事務室から会議室に移動しているのを見て、『落としたら怖いな』と思う。ネットブックの底に革のストラップを固定させ、手のひらをそのストラップに入れて運べば、万が一の場合の落下に対処できる」

 と思いついたとする。しかし、アイデアマラソンのノートには、

 「ネットブックの底に革のバンドを取り付ける」

 というような文と絵だけしか書かなかった。それがポメラでは素早く起動するため、上記の詳しい説明を書き留められるようになった。

 あるいは、会話文がそのまま頭に浮かぶこともある。これまでは会話文を思いついても、そのまま書き込めず、状況説明文に“変換”せざる得なかった。文章を書き留めるために、その場でPCを取り出し、Windows VistaノートPCを立ち上げて、入力がOKになるまで待っていたら、ほぼ間違いなく頭の中で思いついた文章が消えてしまったり、文体が変わってしまったりするからだ。そこでポメラである。文章や会話文の思いつきが頭から消える前に、ポメラをさっと広げて打ち込むわけだ。

 頭に浮かぶ発想の中には、短いエピソードのような内容もある。例えば、この「笑うアイデア、動かす発想」などに使う内容であったり、書籍の執筆で活用できたり、講演の言い方の1つであったりする。

 筆者のポメラには、このようにして打ち込んだ文章が、改行ごとにたくさん並んでいて、1つの短い文を発展させて、数百字から数千字の文章に広がることもある。

 ポメラを購入した後は重いノートPCを持たずに、喫茶店に行くようになった。狭いテーブルの上に、ポメラとエスプレッソコーヒーと紙のノートが共存している。

 大切なことは、ガンマンが銃を抜くようにポメラをさっと取り出せるようにしておくことである。筆者は小さなポシェットに収納して、肩から掛けている。ああ、この原稿も今日、図書館でポメラで書きこんできて、最終的にはノートPCで完成させたものである。

今回の教訓

 たいていのことは早いほうがいい。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

 1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「感動する科学体験100〜世界の不思議を楽しもう〜」(技術評論社)も監修した。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちらアイデアマラソン研究所はこちら


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