次に、電子文書の維持管理を適切に行うために必要な、ルールと組織について見ていこう。
これまでの文書管理規程や文書保存規程は、紙の文書を前提としたもので、そのまま電子文書にも適用できるとは限らない。そのため、こうした規程類全般を見直し、実態に即したものに変えていく必要がある。
これは、従来の文書管理規程を書き換えるだけでなく、新たに電子文書保存規程や利用規程、さらには廃棄規程なども付加することが考えられる。
企業が保有する情報は大きく4区分に分類できる。「公開」「社外秘」「部外秘」「極秘」である。基本的に、公開している情報以外はすべて社外秘であるという認識が必要だ。
この機密区分に応じて、PCシステムのアクセス権限設定を行う。IDとパスワードで設定するのが一般的だが、最近ではこれらに加えて指紋や静脈など、身体的特徴で相手を認証するバイオメトリクス(生体認証)の企業内への展開も活発になっている。
これにはデータそのもののバックアップと、システム全体のバックアップという2つの意味がある。データのバックアップは、電子記録媒体にデータを移管しておき、施錠できる保管庫などで管理する必要がある。システムのバックアップは、ハードウェアやソフトウェアのバージョンアップ後も確実に読めるよう担保する必要がある。
保存中であまり利用しないデータであっても、毎年の動作確認は必要だ。
− | 光ディスク系記録媒体 | 磁気テープ系記録媒体 |
---|---|---|
湿度 | 40〜60% | 40〜60% |
温度 | 15〜25度 | 15〜25度 |
保存環境 | 発塵が少ない環境 | 発塵が少ない環境 |
そのほか | 遮光下で保存 | 強磁気の発生場所から引き離す |
電子文書であっても企業が保有する経営記録には何ら変わらない。紙文書同様ライフサイクル管理を行う必要がある。なお、紙のファイルについては、ファイルのまとまり単位で記載すればよかったが、電子文書は1件単位で、保存年限設定などをする必要がある。
紙文書では、文書主管部門は大抵の場合、総務部門が該当する。しかし、コンピュータが正常に稼働することが要件の電子文書管理については、総務部門に加え、システムの開発設計や運用保守を担当する情報システム部門の協力が不可欠となる。今後は、総務部門と情報システム部門の共管が望ましいだろう。
これらに加えて、環境変化に社員全員が慣れる必要がある。従来の慣行や意識のままでは、セキュリティーなどの運用面からも対応し切れない部分が出てくるだろう。社員に対する教育や啓発は、引き続き行う必要がある。
執筆:エフエム・ソリューション FMコンサルタント
山野辺 泉