法律上は、他者の権利を侵害すると罪になる。倫理上は、侵害を意図しただけで罪になる名言で読む「リーダーの必読書」(2/2 ページ)

» 2009年10月30日 08時44分 公開
[フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]
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 「夫に置き去りにされたんです。でも、彼はそれに気づいてないと思います」と彼女は説明した。家庭内暴力の可能性があると疑った隊員は質問した。「喧嘩でもしたんですか? ご主人は何であなたを残して、走り去ったんでしょう?」

 「夫はきっと、私が後部座席で眠っていると思ってるんです」

 「ご主人は、自分の車の後ろの座席にあなたがいると思ってるんですか? いないのに気づかないなんて、妙だと思いません?」

 「いえ、私が眠り込んでると思ってるんでしょう」

 「あなたのお名前は?」

 「サンドラ・コヴィーと言います」

 長い沈黙があった。「作家のスティーブン・コヴィーさんと何か関係がおありですか? 私は、あの方のセミナーを受けたことがあるのです」

 「そうそう、その人ですよ。私を置き去りにしたのは」

 パトロール隊員とさらに話をしているうちに、父が携帯電話を持っていることを母が思い出し、電話をしてみた。

 「コヴィーさん、こちらハイウェイ・パトロールです。車を直ちに路肩に寄せてもらえますか。そして、あなたが今いる正確な位置を教えてください」

 父は、ハイウェイ・パトロールが何で自分の携帯の番号を知っているのか不思議だったが、スピード違反でもしたのかと思って答えた。「分かりました。場所はアイダホフォールズあたりかだと思いますが、さっきまで眠っていたので、正確なところは分からないんですよ。10分か15分ほど前まで運転していた妻に、今どの辺りか聞いてみますよ」

 そう言って、父は後部座席の方に向かって叫んだ。「サンドラ! サンドラ! 起きなさい! ハイウェイ・パトロール隊員から電話だ。我々がいる正確な位置を知りたいらしい」

 「コヴィーさん! コヴィーさん!」パトロール隊員は電話口に向かって大声で叫んだ。「奥さんはそこにはいませんよ」

 「いや、妻は後ろの席で眠ってるんですよ」父は即座に答えた。「待っててください。車を脇に止めて、起こしますから」

 父はそう言って車を止め、後部座席を覗き込んだ。さらに気が狂ったように毛布や枕の中を捜し始めた。だが、そこに母の姿はなかった。

 「大変だ、妻がいない!」父は叫んだ。

 「奥さんは私の車にいますよ」パトロール隊員が答えた。

 「えっ、どうしてそっちにいるんですか?」

 「ちょっと前、あなたが奥さんを道路の脇に置いて行ってしまったんですよ」

 「何だって?」父は怪訝そうに言った。「妻は車に乗らなかったってことですか? えっー、そんな馬鹿な! まあ、あまり静かなんで、おかしいとは思ってたのですが」

 パトロールカーはついに父を発見し、全員で事の経緯を確認しながら大笑いした。「子供たちに話しても信じてもらえそうもないな」そう父が言った。

 「大した事じゃありませんよ。署のほうに連絡しますから、ちょっと待っててください。よくあることです」パトロール隊員は言った。


 ここであなたに1つ質問をさせていただきたい。私の両親の一件について、あなたがその一部始終を目撃していたとしたら、父の「意図」は何だと思っただろうか。

(『スピード・オブ・トラスト』108〜112ページより抜粋)

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『スピード・オブ・トラスト 「信頼」がスピードを上げ、コストを下げ、組織の影響力を最大化する』

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