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» 2010年01月20日 12時00分 公開

プロ講師に学ぶ、達人の技術を教えるためのトーク術:分からないことは1つに絞る――アポロ13号に学ぶ「思考の刺激法」 (3/3)

[開米瑞浩,Business Media 誠]
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 例えば「要求事項がまだ明確でない」という場合、実際にはその段階では「要求事項とそれを実現する仕組み」の少なくとも2つが分からない状態のため、「考える」上でのハードルが高いのです。その高いハードルをいきなり超えさせようというのは無理があります。やはり研修である以上、1つできたら2つ目、2つできたら3つ目を、と各個撃破できるように課題を調整しておかなければなりません。

 もちろん、実際の仕事の現場では、「問題が1つずつしか現れない」なんてことはありえません。アポロ13号でもそうであったように、複数のトラブルが同時に降りかかってきてあたふたするのが通例です。通例ではありますが、だからといってそれを研修の場でもやれ、というのは無理があります。研修プログラムを組み立てるときには、分からないことは1つに絞って考えさせるようにしましょう。

ゴールにたどり着けるまでの「学びの階段」を構成する

 わたしが研修プログラムを組み立てるときのイメージを書くと図3のようになります。

図3.ゴールを設定してから、そこへの階段を1つずつ出していく

 まずは1テーマのゴールを出します。図中の黄色い星印です。ただしそれは一気に目指すには遠すぎるようなものなので、

 はい、ゴールはここね。あとは自分で考えてね。

 とするのではなく、その間を埋めるA、B、C……という階段を用意しておいて1つずつ出していきます。この「階段ひとつ」が「たったひとつだけの、分からないこと」になるように、またそれを順番に上がっていくとゴールにたどり着くように、そして一段上がるごとにゴールに近づいている予感が持てるように注意深く構成しなければなりません。

 これをしていないと、

 さあ、ゴールはここですよ。そこにたどり着く方法を考えてください。

 ……うーん、難しいかな?

 ……だめ? 分からない?

 しょうがないな、つまりね、ABCDなんだよ。

 Aは……で、Bは……で、Cは……で、

 分かった? これでできるから、覚えといてね。

 のように、「考えさせても分からないから先生が答えをしゃべってしまう」ことになり、結局のところ「単なる知識伝達型の研修」に陥ってしまいます。これでは受講者が「自分で考えて答えを見つけた」という感触は得られません。

 もちろん、こういった「学びの階段」を用意してやることは楽ではありません。当連載の第11回「人材育成には知恵より“知識”が大事 教え方に演出を」や第12回「謎解きには、ドラマを作ろう」でもその一例を見ることができますが、「1ステップにつき、分からないことが1つだけ解決する」ように全体を組み立てるのは大変に気を使います。しかしそれが講師たるものの使命ですので、講師役を務めるからには腰をすえて取り組んでほしいのです。

 では、次回はわたしがこの「ゴールへ向けた学びの階段」を作るためにいつも使っている手順をご紹介します。

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