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» 2013年01月17日 10時00分 UPDATE

田中淳子のあっぱれ上司!:優しくするだけでは若手を育てられない (1/2)

後輩を育てるには、あえて失敗経験を見せたり、ドキッとする経験をさせたりすることも必要だ。問題が起きた時、ベテランだけで対処するのではなく、若手もその場に身を置かせるのも1つの育て方である。

[田中淳子,Business Media 誠]

編集部からお知らせ

 ITmedia エグゼクティブでの人気連載「田中淳子のあっぱれ上司!」が誠 Biz.IDにて再開します。悩める上司と部下の付き合い方を、企業の人材育成に携わって27年(!)の田中淳子さんが優しくにこやかに指南するこの連載、部下とのコミュニケーションに悩んでいる上司はもちろん、そうでない上司も必見です!


 もう20年ほど前の話だが、とても好奇心旺盛な新入社員がやってきた。オフィス内を案内したとき、非常口に興味を持ち、自分の目で確かめたくなったらしい。後日、開けてはいけない非常口への扉を無理やり開錠してしまった。

 即座に防災センターからオフィスに連絡があり、「何かありました?」と問い合わせがあった。ビル管理側で施錠しなおさないといけないことと念のための確認もあり、警備と管理の方がそろってオフィス階までくることになった。

 新入社員は上司にお目玉を食らったが、上司が「私が代わりに謝ってやるから」と言うので、2人で雁首(がんくび)そろえて担当者がやってくるのを待つこととなった。

 担当者から「試しに開けてみるなんて困りますよ」と苦言を呈された上司は、「私が代わりに謝ってやるから」と言っていたにもかかわらず、突然「この、うちの新人がやりました!」と頭押さえて最敬礼させたそうである。

 土壇場で上司に裏切られた形になった彼女は、同じグループの先輩であった私に後から一部始終を聞かせてくれ、私は大笑いしたものだ。上司がしそうなことだな、と思ったからだ。とはいえ、このお灸により、彼女は不用意に興味本位な行動をとってはいけないと学んだはずである。

失敗体験からどう学べば良いか分からないとき

 失敗経験というのは成功経験以上に人を成長させるものだ。これは多くの人が自らの体験からもそう思うに違いない。ただ、あまりに大きな失敗をしてしまうと乗り越えられないというケースもあるので、小さな失敗を経験させながら「どうすればよかったのか」「次はどうするか」といったことを振り返り、次に生かすことが大事である。

 とはいえ、昨今ミスに対する許容度も下がっている上にコンプライアンスなどの関係で、新人や若手が失敗するようなことを体験する機会も減っていると聞く。あらかじめ予防してしまうかららしい。では、どうやって学べばよいのか。

 人は直接の体験からもっともよく学ぶものだが、他者の体験を垣間見ることも学びには役立つ。

クレームの場にあえて新人を連れていく

 あるマネジャーは、顧客からのクレーム対応があった場合、必ず新入社員も同伴させると言っていた。普通、おわびというと、しかるべき立場の人間だけが先方に出向き事情説明や丁重なおわびを伝える場面になる。若手の出る幕ではない。しかし、そのマネジャーは、若い部下をあえて連れて行くそうだ。「黙っていていいから、一部始終を見ていなさい」と言っておくという。

 彼はこう言う。「そういう怖い場面、トラブルの場面、いつも上の人間だけが対処していたら、どうやって顧客が怒るか、何をどう怒ってしかられるかことが肌感覚では分からない。だから、連れて行く。ちょっとしたミスによりどれほど相手の怒りを買うかというのは生で見せた方がいいから。そうすると部下ももっと緊張感を持って仕事に取り組むようになるし」

 これは勇気のある行為だと思う。誰だって自分が頭を下げているような場面を部下に見られたくはないだろう。かっこ悪い姿を後ろから見られるのは上司としてのプライドが邪魔をしそうである。でも、部下にしたら、顧客のクレームというのはどんな風に伝えられるのか、それに対して上司がどう対処しているかを現場で直に見ることで「ミスを起こした時のこと」が骨身にしみる経験となるはずである。緊迫したムードを味わわせることで、ミスに対する感覚も鋭敏にし、未然に防ぐことへの感度も高めるのではないだろうか。

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