先日コンサルティングに入ったある会社では、社長から現場を任されていた責任者が辞めてしまうケースが非常に多い。彼らに共通する思想とは?
先日、知人と電話で話しているうちにあることに気が付きました。
私がコンサルティングに入った会社では、社長から現場を任されていた責任者が辞めてしまうケースが非常に多いのです。
「それは偶然ではなくてですか?」
と聞き返してきたのは、そのときの話し相手のKさん。
庄司(私) 最初は私も偶然だと思っていたんです。しかしどうも1つのパターンになっているみたいなんですよ。
Kさん へえ、それは面白いですね。何か理由があるんでしょうね。
そこでKさんと話をするうちにその理由もハッキリ見えてきました。
庄司 辞めちゃう現場の責任者って、いつも怒ってばかりいるタイプの人なんです。
Kさん 売れるまで帰ってくるな! とか、売れない奴はゴミだ、カスだ、みたいに部下を罵倒するタイプですか?
庄司 そうそう、そんな感じです。
肩書が部長であれ課長であれマネジャーであれ、営業部門の責任者にはわりと多いスタイルです。私が営業コンサルに入ると、このタイプの人はかなりの確率で辞めてしまいます。
Kさん でも庄司さんが入ることで、営業チームは成果が出るようになるわけですよね。なのにどうして辞めちゃうんですか?
庄司 そこが私も謎だったんですけど、どうやらですね……。
そう、ここが本題です。どうやら辞めてしまうタイプの現場の責任者は、実は――。
辞めてしまうタイプの現場の責任者の共通点、それは「会社の業績が悪いことはあまり気にしていない」ことが多かったりするのです。
さらに誤解を恐れずに言うと「メンバーには育ってほしくない」のが本音のようなんです。
もちろん本人も自覚してないことが多いので、本音というより深層心理とでも呼んだほうがいいのかもしれません。
Kさん 育ってほしくない! ですか……。でも、育ってくれないと営業成績上がりませんよね?
庄司 そうなんですよ、でもね。
この話を考えるうちに私は「社長と現場責任者の間には深い深い溝がある」ことに気が付きました。
簡単に言うと、社長は「会社の成長」を誰よりも深く考えていて、業績が悪いことにはものすごい危機感を持っています。対して、現場責任者はどうしても社長に比べると甘いです。100倍ぐらい甘いのが普通です。
そして「部下を怒ってばかりいるマネジャー」には、「売れること」よりも「俺はエライんだぞ、上司なんだぞ、と力を誇示すること」が目的になってしまっている人が多いんです。
Kさん ああ、自分の居場所を確保することが一番大事になっちゃっている……。
庄司 そうそう、それです、まさに。
Kさん なるほど、部下が成長しちゃうと自分の居場所がなくなっちゃうんじゃないかと。
庄司 そうなんです。しかもそれだけじゃなくて、自分が何の役にも立ってなかったことがばれてしまうんですよ。
部下に対して「売れない奴はゴミだカスだ」ぐらいの勢いで怒ってばかりいたマネジャーです。こういう人は実際には問題解決をやっていません。
営業における問題解決は、売るためのプロセスを明らかにし、そのプロセスを具体的に進める方法を何通りも試してベストなやり方を探し、見つけたやり方をチームで共有。プロセスの進捗(しんちょく)を見える化して把握し、その過程でぶつかるこまごまとした「これができない、あれができない」問題を1つ1つ解決していく。そんな「作業」の連続です。
こうした問題解決を実際やるようになると、「怒」っても何の役にも立ちません。
よって本当の意味でのマネジメントが機能しだすと「怒鳴り声」は消えてなくなり、皆がジョークを飛ばして笑いながら知恵を出し合って目標に向かう。そんなチームになります。
そしてそのほうが営業成績が上がる、という現実が明らかになるにつれて……。