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» 2013年08月15日 11時00分 UPDATE

ずっと「安月給」の人の思考法:「社員食堂が安い!」と喜んでいてはいけない (1/3)

求人情報に「3食まかない付き」や「寮完備」などの待遇が書いてあるのを見たことがありますか? 食事を提供してもらえれば食費が浮き、寮に住めば住居費も要りません。しかし、ここで「なんていい会社だ!」と、思うのはちょっと早いのです。

[木暮太一,Business Media 誠]

集中連載「ずっと「安月給」の人の思考法」について

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 本連載は、木暮太一氏著、書籍『ずっと「安月給」の人の思考法』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。

 給料の上がる人と上がらない人は何が違うのか。そもそも給料とはどうやって決まるのか。で、どうすれば給料は上がるのだろうか。

 「年功序列は悪!」と考えている、「生産性が上がれば、給料も上がる」と期待している、「チャンスはいつまでもある」と思っている、就業規則を読んだことがない、「会社の経費で落ちるか」をいつも気にしている、「人は見かけが9割」を理解していない。

 そんな全国のサラリーマンに贈る本書には、いつまでも薄給の「あの人」みたいにならない思考のヒントが満載です。

 ベストセラー『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)の著者である木暮太一が、1年の歳月をかけて完成させた渾身の1冊。


著者プロフィール:

木暮太一(こぐれ・たいち)

経済入門書作家、経済ジャーナリスト。

慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学在学中に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。

相手の目線に立った話し方・伝え方が「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。

今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』(光文社新書)、『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)など著書多数、累計80万部。


 ここまで、資本主義経済の原理原則や給料のルール、その他給料が安くなってしまう要素を説明しました。これらの原則やルールを理解し、これらに沿って努力をすれば給料を上げることができるでしょう。ですが逆に、これらに反していたら「安月給」から抜け出すことがかなり難しくなります。それこそ安月給の思考法なのです。

安月給の思考法1.「社員食堂が安い!」と喜ぶ

 労働力の価値を下げるのは技術革新だけではありません。あなたの生活費が下がれば、労働力の価値が下がりますね。

 とは言え、世の中全体の物価水準が下がっていく分には、個人としてはそれほど問題にはなりません。世の中の物価が下がった結果、給料が下がったとしても買えるものは変わらないからです。

 しかし、もし自分だけ生活費を下げられてしまったら、どうなるでしょうか?

 例えばこういうことです。求人情報を見ると「3食まかない付き」や「寮完備」という仕事があります。食事を会社が提供してくれれば、社員は食費が浮きます。寮に住むことができれば、住居費が不要になります。

 ここで、「なんていい会社だ!」と、思うのは早いです。

 繰り返し説明しているように、労働者が明日も働くのに必要な経費が少なくなれば労働力の価値が下がり、給料を下げることができます。会社が食事を用意すれば、それだけ食費が減ります。その分給料を安くしても労働者は生きていけるのです。

 日本の単身世帯の食費は月平均で4万円程度です。このくらい食費にかかるだろうな、という想定で給料は設定されているわけです。

 しかし、食事を会社が負担してしまえば、払う必要がありませんね。

 以前、中学校の同窓会に出席をしたとき、自分たちの会社の話になりました。そこで友人の1人が「うちの会社は給料は安いけど、社食が激安だから助かる」と言っていました。でもそれは違うんです。

 「給料が安いから、食事を安く提供してくれるのはありがたい」ではありません。「食事を安く提供するから、給料を安く抑えることができる」のです。これが正しい理解です。

 これは、労働者が自分で払う食費を会社が前もって肩代わりしているだけのようにも思えますが、そうではありません。労働者が毎月払う食費は、スーパーやレストランの利益も含んでいます。スーパーで2000円買い物をしたら、そのうちの20〜30%程度は、スーパーの人件費や利益分です。純粋な食料に払っているお金はその一部です。

 また外食産業の原価率は30%程度が相場ですから、レストランで食べた1000円の食事は、材料だけで考えれば300円程度で済みます。これを会社が負担すればいいわけです。

 つまり、会社からすれば「300円の原材料を負担すれば、労働者の給料を1000円減らせる」という構造なのです。正確に言うと、企業が食事を提供する際には調理人を雇い、食堂設備を用意しなければいけないので他にもコストはかかりますが、ここでは話を単純化させて考えています。

 給料が減ってしまうのであれば、労働者からしても「3食まかない付き」はじつはありがたくはない制度です。自分で好きなものを食べることができないからです。また、「今日は違うレストランで食事をしたいな」と思ったら、それは「自腹」になってしまいます。

 入社するときには「食事を提供してくれるのだったら、多少給料が安くてもいいか」と考えたかもしれません。しかし、それによって自分の選択肢が制限されてしまうことは確実です。「社員食堂がタダ!」これは一見、社員にやさしい会社に見えますが、じつは社員の給料を減らす手段の場合もあるわけです。

 グーグル本社の社員食堂は、3食無料だそうですね。それを聞くと、グーグルも「意図的に!?」と感じるかもしれません。ただ、問題視されるべきは、3食無料にして、その分給料を下げている会社です。単に食事を無料で提供していることが悪いことではありません。そこは誤解のないように。

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