世の中には、自分の仕事や給料に不満を持っている人は少なくありません。いくら欲しいのか、また、どんな仕事をしたいのか。理想の働き方はあるのか――。今回は、給料よりも大事なもの「自己内利益」について紹介します。
本連載は、木暮太一氏著、書籍『ずっと「安月給」の人の思考法』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
給料の上がる人と上がらない人は何が違うのか。そもそも給料とはどうやって決まるのか。で、どうすれば給料は上がるのだろうか。
「年功序列は悪!」と考えている、「生産性が上がれば、給料も上がる」と期待している、「チャンスはいつまでもある」と思っている、就業規則を読んだことがない、「会社の経費で落ちるか」をいつも気にしている、「人は見かけが9割」を理解していない。
そんな全国のサラリーマンに贈る本書には、いつまでも薄給の「あの人」みたいにならない思考のヒントが満載です。
ベストセラー『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』(星海社新書)の著者である木暮太一が、1年の歳月をかけて完成させた渾身の1冊。
木暮太一(こぐれ・たいち)
経済入門書作家、経済ジャーナリスト。
慶應義塾大学 経済学部を卒業後、富士フイルム、サイバーエージェント、リクルートを経て独立。学生時代から難しいことを簡単に説明することに定評があり、大学在学中に自作した経済学の解説本が学内で爆発的にヒット。現在も経済学部の必読書としてロングセラーに。
相手の目線に立った話し方・伝え方が「実務経験者ならでは」と各方面から高評を博し、現在では、企業・大学・団体向けに多くの講演活動を行っている。
『今までで一番やさしい経済の教科書』(ダイヤモンド社)、『学校で教えてくれない「分かりやすい説明」のルール』(光文社新書)、『カイジ「命より重い!」お金の話』(サンマーク出版)など著書多数、累計80万部。
本連載では給料の構造と、給料を下げないために、給料を上げるために何を考えていかなければいけないかをお伝えしてきました。労働者としてこれから生き残るため、サバイバルのための知恵です。
日本人はお金の話を避ける傾向があります。自分の給料はもっと高くていいはず、もっと高くして欲しいと、本気で交渉する人も少ないでしょう。
これまでは、それでもよかったかもしれません。一旦正社員として入社すれば、よほどのことがない限り解雇されません。年次を追うごとに給料は上がり「一億総中流」と言われながらも、「小さな幸せ」をつかんでいたでしょう。
でもこれからは違います。自分の給料を本気で考えてそれが減らないように、増えるように対応していかないと、生き延びていくことが難しくなります。給料を考えることは、非常に重要なことなのです。
ただし、給料よりも大事なものがあります。それは「自己内利益」です。これは僕が作った言葉で、企業の会計の考え方から、労働者の幸福度を考える概念です。企業の会計で言うと、
売上 − 費用 = 利益
です。
通常「利益」が最も重要なポイントとしてとらえられています。まれに売上を重要な指標として考えることもありますが、基本的には「利益」です。どんなにたくさん商品を売っても、利益を稼げなければNGです。そして、利益が上がらないものは「やるべきではないビジネス」という判断をされます。
売上が100億円でもコストが110億円かかってしまったら、そのビジネスは赤字です。新しいビジネスを手掛けるときには、売上規模もさることながら、そのビジネスが黒字になるかが大きな判断ポイントになります。
これは企業経営を考えるうえでは当然の判断です。経営者でなくても「黒字になるビジネスを手掛けるべき」「赤字になるビジネスは避けるべき」ということはほとんどの人が「当たり前」として理解しているでしょう。
ところが、労働者としての自分自身の「会計」になると、この「当たり前」だったことを気にとめている人がほとんどいません。
企業の売上は、その企業に入ってくるお金「収入」を意味します。そして費用は、その収入を稼ぐのに費やしたものを意味します。この差し引きが「利益」ですね。これを個人に置き換えると、こうなります。
そして、この差額が「自己内利益」なのです。
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