インタビュー
» 2014年01月14日 12時00分 UPDATE

企業家に聞く【夏野剛氏】:体育会系の人間はもう要らない!? 夏野剛氏に聞く、グローバル時代に必要な教育 (1/3)

ITの普及で新しい働き方が可能となったいま、多様性のある人材を育てるには「自分のやりたいこと」と正面から向き合える教育環境を整えることが必要だと夏野剛氏は述べる。

[まつもとあつし,Business Media 誠]

 ニコニコ動画を展開するドワンゴなどの取締役を務める傍ら、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で招聘(しょうへい)教授として教壇に立つ夏野剛氏。現在48歳の氏は2児の父親でもある。

 前編「夏野剛氏が語る教育の未来――モンテッソーリ教育から英語必修化まで」に続き、コメンテーターとしてTV番組にも出演し、Twitterなどインターネット上でも幅広く積極的に発言を続ける氏に、日本の教育問題を中心に話を聞いた。

shk_natsu01.jpg 夏野剛氏

教育システムを抜本的に改めよ

まつもと: いま政府が進めている「教育再生実行会議」での議論はどのようにご覧になっていますか?

夏野氏: 2つの意味で全然ダメだと思います。まず「尖らせる」というのとは逆方向に向かっています。ゆとり教育の反省から再び均一化教育の強化を進めようとしている。これは文部科学省が教育の実施度合いを授業時間数で測っているのも問題なんです。これだけIT化が進んでいる時代に、教室での授業時間を指標にするなんて間違っています。僕は以前から「ゆとり教育」で構わない、と主張しています。優秀なスポーツ選手など世界と戦える人材がそこから育っているわけですから。

 そして「多様性」という観点からは、オプション科目が少なすぎるのも問題です。まず科目別の飛び級を認めるべきでしょう。「モンテッソーリ教育」がまさにそれを実践していると思いますが、例えば数学ができるならどんどん飛び級できるようにする。

 もう1つは、必修科目を最小限にしてオプション科目を増やすべきです。必修科目は午前中だけにして、午後はスケートやゴルフのクラスがあってもいいはずです。現状の1回1時間程度の体育の授業では、ほとんどトレーニングにもなっていませんから。家庭科なんかも必修では止めてしまって、もっと具体的に「日本料理」といった具合でオプションに回し、そこでは本格的な技術を身に付けられるようにすればいい。

まつもと: 確かに米国の小学校では、地元の航空産業への就職を視野に入れたオプション過程があったりしますよね。さまざまなクラス、学年から希望者が受講する形を取っていたりします。

夏野氏: もう1点、先ほどIT化といいましたが、必修科目は原則ビデオ教育ベースに改めるべきです。一部の予備校などがすでに実践していますが、サテライト講義でも数学などは超人気講師が教えたほうが圧倒的に面白いし習得度合いが上がるはずです。特に理数系の授業はそのほうが理解力も一気に高まるでしょう。理系志望者も増えるはずです。地理なども、その土地の映像を見ながら学んだほうが絶対にいい。残念ながら現場の先生が皆、教え方がうまいとは限りませんから。教え方がうまい教師の授業をビデオに撮って活用すべきです。

まつもと: 確かに小学校などは1人の先生が複数の科目を教えますし、クオリティにバラつきがあるでしょうね。

夏野氏: そうでしょう。ではいまの先生はどうすればよいかといえば、ビデオ講義のTA(ティーチング・アシスタント)に徹するんです。45分の授業であれば30分のビデオを見て、残り15分で質疑応答や補足説明をすればいい。そうすれば、その先生にとって苦手科目でも効果を上げることができるはずです。

 コンテンツはEテレや放送大学にもたくさんありますし、先生同士が得意な科目の講義を録画し合い、それを利用してもいいですよね。文科省がサーバを用意して、そこにビデオをアップロードし、ランク付けするといったこともありではないかと思います。そうすれば先生が好みの講義を選択することができる。現場の先生はTAというよりも授業をコーディネートする演出家のような役割に近くなっていくわけです。

まつもと: 現在、小学校が導入を進めている電子黒板が活用できそうですね。しかし、仮にそうなると現場の先生からは反発も出そうです。

夏野氏: でも、今の先生の雇用を守るより、将来の国民の教育レベルを上げるほうが大事なのは自明ではないでしょうか。もし、それよりも現状維持が大事だっていう人がいたら「馬鹿者!」って言いますよ、僕は(笑)。

 チームラボの猪子寿之代表が書籍『日本的想像力と「新しい人間性」のゆくえ』でも書かれていたけれど、インターネットの時代になって「好きなものを突き詰められる」ようになったんです。昔は何かの知識や経験を得ようとすれば、何らかの組織や団体に所属せざるを得なかったわけですが、今や情報ならネットでいくらでも手に入るようになった。

まつもと: ビデオによる教育から一歩進めて、講義をネット上で公開する大学も増えていますね。

夏野氏: 好きな分野の情報をいくらでも手に入れられることはもちろん、ネットで仲間とつながることができるようになったのも大きい。ITのおかげで無理に組織のスケジュールにしばられて、したくもないことをする必要はなくなったんです。教育を行う側が、それに対応しなければならないことは当たり前のことだと思います。多様性を受け入れるのは人材はもちろん、教育システムもそうでないと。

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