コラム
» 2014年02月19日 10時30分 UPDATE

「会社員がスーツを経費にできる」「スーツで節税」が実質的には使えない6つの理由

2013年(平成25年)から、会社員が節税できる制度ができました。一見、「スーツが経費に!」「スーツで節税」と思えますが、実質的に使えるのはよほど特殊なケースではないでしょうか。

[井ノ上陽一,Business Media 誠]

本記事は、ブログ「EX-IT ExcelとITで効率化して、仕事と人生を楽しもう」より転載、編集しています。


2013年から、スーツを経費にできる制度ができたけど……

 2013年(平成25年)から、会社員が節税できる制度ができました(正確には、節税の範囲が広がりました)。過去にこのような記事「会社員の書籍代、資格取得費などが経費になる<特定支出控除>は実際に使えるか?」を書いています。この件について、「スーツが経費になる」「スーツで税金が戻ってくる」という報道やニュースが多いですが、冷静に真実を把握する必要があります。

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 税金は、収入から経費を引いた利益(所得)によって計算されます。経費が増えると、税金は減るのです。

 通常、会社員の場合は給料から一定額の経費しか引くことができません。年収500万円なら154万円、年収1000万円なら220万円の経費です。これを給与所得控除といいます。

 これ以外に、書籍、交際費そしてスーツなどが経費に落とせるようになりました。中でも「スーツを経費にできる」のは以下の理由から注目されています。

  • 仕事で必要とするシーンが多い
  • 金額が大きい
  • 税金が減らせる
  • 一般的に経費として認められていないスーツが経費に落とせる

 この1年、雑誌やネットの記事でも「スーツを経費にできる!」といったものをよく見かけました。しかし、そうそうおいしい話ではないのです。

スーツで節税するための6つのハードル

 スーツで節税するためには、次のようなハードルがあります。

1. 会社の証明が必要

 こちらに紹介されているような様式で、会社から証明してもらう必要があります。

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 ややめんどくさいでしょう。

2.確定申告が必要

 レシートを保管しておき、年度末に確定申告をする必要があります。まあ、ここまでは節税のためならやれる範囲でしょう。

3.スーツを結構買わないと節税にならない

 10万円のスーツを1着買っただけでは、節税になりません。年収に応じて、一定の金額以上でないと意味がないのです。

 例えば年収300万円の方の場合、年間に54万円以上スーツを買う必要があります。

 次の表を参考にしてください。スーツだけで節税するなら、年収に応じて節税基準額以上のスーツを買う必要があります。ここでいう「年収」とは、額面金額、所得税や社会保険料を引く前の金額をいいます。給与明細の「課税支給額合計」や、源泉徴収票の「支払金額」です。

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 1500万円超は、一律125万円となります。

4.スーツだけでは65万円の限度がある

 「年収がもっとあるから、スーツ代はもっと使う」という人もいるでしょう。しかしスーツ代だけでは、年収380万円以上の方は節税できません。スーツだけでは65万円までしか経費に入れられないからです。(図はキリのいい200万円、300万円、400万円……で計算してます)。赤い部分が経費に含められる枠となります。

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 この制度はスーツだけではなく、次のものが対象です。

 (1)通勤費

 (2)転居費

 (3)研修費(セミナー)

 (4)資格取得費(1年間分しか落とせない)

 (5)帰宅旅費(単身赴任などの場合で自宅に帰る旅費)

 (6)書籍代

 (7)衣服代(スーツ)

 (8)交際費

 ただし、スーツを含む(6)(7)(8)の合計は65万円が限度となります。

 年収400万円なら67万円、年収500万円なら77万円、年収600万円なら87万円を超える必要があり、実質的には、スーツだけではなく、他の経費(上記(1)から(5)の合計額)を組み合わせるしかないのです。

5. 節税額は税率をかけたもの

 さらに、基準額を超えた部分の金額だけ節税できるわけではありません。その金額に税率(所得により変わる)をかけたものが節税額となります。

 年収300万円の方が65万円分スーツを買ったとしたら、その節税額は、65万円から基準額54万円を引いた11万円ではありません。11万円に税率(5%)をかけて計算した5,500円が節税額(所得税)です(住民税にも影響があります)。

 65万円のうちの5500円ですので、かなり少ないといえるでしょう。もちろん戻ってこないよりはいいのですが……。

6. そもそもそんなにスーツを買えない(買わない)

 そもそもスーツを65万円も買わないでしょうし、買えないでしょう。仮にスーツがたくさん必要となったとしても、今は安くていいスーツもありますし、セールで買えば安くで買えます。合計金額も少なくなるはずです。

派手だけど、実際は使えない制度も多い

 「スーツが経費に!」「スーツで節税」と派手に報道されていますが、実質的には使えません。よほど特殊なケースではないでしょうか。

 このように、「一見派手だけど使えない」「お得そうに見えてそうではない」というものが、税金にはよくあります。「節税も考えてますよ」というアピールだったり、週刊誌や新聞の売り上げを伸ばすためだったりするのです。

 重々気をつけましょう。

筆者プロフィール

タイムコンサルティング代表取締役・税理士。会計ソフトfreee認定アドバイザー。総務省統計局勤務の国家公務員から税理士となった「ITと数字のプロフェッショナル」。Excelによる業務効率化を得意とする。日課は、早起き(4〜6時)、ブログ執筆、トライアスロンのトレーニング、料理、少々ゲーム。ブログは2007年7月9日より毎日更新中。


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