マンガやキャバクラ代は経費になりますか?知っておきたい領収書の常識

個人事業主が自分の仕事に直接関係のあるモノやサービスに投資をすることは、将来の収益にとって貢献すると考えるのが自然です。節度を守り、きちんと説明、証明ができれば出版物などの購入代は、必要経費として考えてOKでしょう。

» 2014年01月16日 12時00分 公開

集中連載『知っておきたい領収書の常識』について

 本連載は、2013年12月21日に発売の梅田泰宏著『経費で落ちるレシート・落ちないレシート』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 フリーランスや個人事業主として働く人にとって、領収書、レシートは「金券」のようなもの。その支払いが「経費である」と認められれば、支払う税額が減るからです。

 とはいえ、「何が経費になって、何が経費にならないのか」という基準は、誰も教えてくれません。なぜかと言えば、経費で「落ちるか」「落ちないか」という意味では、全ての領収書が「グレー」であり、ケースバイケースで、明確な基準が存在しないからです。

 しかし、実は、「落とすコツ」というものが確かに存在します。それは、具体的なケースを通してのみ、知ることができる種類のものなのです。本書は、「経費」に関する基礎知識を押さえたあと、具体的なケースを通して、経費で「落とせる基準」と「落とすコツ」を解説していきます。

  •  本連載は、フリーランスのライターである鈴木ヒロシさんと、税理士の梅田(私)が主な登場人物です。

 フリーランスの編集者やライターの仕事は、最終的には出版物やWebでの文字をリリースしていくことですね。当然、読み手にとって分かりやすく、また読みやすい体裁を心掛けていることでしょう。

 そのためには、自分自身で考え出した独自の視点も個性を出すためには必要となります。一方、他人が世に送り出した制作物も大変参考になるでしょう。

 自分の仕事に直接関係のあるモノやサービスに投資をすることは、将来の収益にとって貢献すると考えるのが自然です。したがって、コミックス代はもとより、出版物などの購入代は、必要経費として考えてOKでしょう。


鈴木

じゃじゃ! それ、ホントっすか?


梅田

ホントもウソも、事実あなたはコミックスを読んで、ネタを拾ってきたりするでしょうが。ところで、何で「じぇじぇ」じゃなくて「じゃじゃ」なの?


鈴木

岩手県でも盛岡あたりでは、「じゃじゃ」なんだそうです。雑誌で読みました!


梅田

へえ、そうなんですか。……ほら、こういうふうに雑誌のネタが活きてくる。いま、われわれは仕事をしているわけではないけど、もし私とあなたが、仕事上の付き合いも深いとするでしょ。そうなると、「仕事に関連する経費です」ということができる。


 コミックスも、たとえ直接的には仕事に関係なくても「こういうものを読むことによって書く力やイメージを養っているんだ」といえると思います。もしそれがまったく認められなかったら、どうやって収入を得ればいいのですか、という話になる。何の資料もなく、天才的なひらめきのようなもので文章を書くんですか、と。だから堂々と申告していいんです。

 とはいえ、書いている記事とまるでかけ離れたコミックスなどは、100%すべてが必要経費と考えるのは、正直むずかしいところではあります。しかし、まったく経費で落ちないということはない。半分は落ちると考えるのが普通でしょう。

 おそらくフリーのライターや出版プロデューサーは、経費の中でいちばん多いのが「図書費」です。仕事柄、新聞や出版物などから、いろんなネタを拾ってきているはずだから。

 これは必要経費だといえるんです。もし税務調査が入って、「これは本当に仕事に活かされいるんですか」と言われても、「インスピレーションを得ています」と言えばいいワケです。

 ただし………ここからが大事です! 単にインスピレーションを得ています、だけでは税務署も納得しません。だから、何でもかんでも費用にするということではなく、この出版物は100%費用にしようとか、これはせいぜい50%だな……という「必要経費性の基準」を自分の中に持っておけばいいと思います。

 ただ、100%にするか50%にするか。この基準はどこにもありません。税法にも書いてない。これは個人個人が「常識と社会通念」に照らし合わせて考えるものです。誰が考えても50%だろう、誰が考えても100%だろう、というものを、納税者がしっかりと持っていないと、税務署は納得しません。

 加えて、できれば「この仕事に、こう活きた」という資料、例えば自分が書いた記事と参考にしたモノなどを持っておくといいでしょう。何もしないで、すべての出版物を必要経費にしてくれ、というのは、ちょっと甘すぎます。


鈴木

知り合いのライターは、ある年すごく儲かって、税務調査が入ったらしいです。カタい工業系の雑誌に書いているライターなんですけど、コミックスや小説は認められなかったんだそうです。


梅田

それは、そのライターさんの説明不足ですね。そういう地味な媒体でも小説やコミックスからアイデアや書く力を得ている、と堂々と主張できなかったんじゃないかな。そういうことをちゃんと説明しなかったからだと思いますよ。


鈴木

専門誌で仕事してても、専門書じゃないと資料代にならないわけじゃないんですね。


梅田

そうですね。文章をやさしくするために、軟派な雑誌を読むこともありますし、カタい雑誌だって、中には柔らかいコラムがあるものでしょ。


鈴木

センセって、話分かるなあ……。


梅田

私はたまたまあなたと知り合いだから、ライターの仕事内容を知っているだけのことです。税務署の人は、「ライター」と言われてもよく分からない可能性が高い。


 例えば風俗誌で記事を書いているライターが、あちこちのキャバクラに通い詰めて、実際そこで取材というか、ネタを得ている場合。「ネタを拾って記事にした」ということが説明、証明できれば、キャバクラの領収書は経費で落ちるはずです。「だって体験しないと仕事にならないよ」ということですから。

 しかしそうは言っても「遊び」の要素も強いから、全額ではないでしょ、となるのです。例えば50%や60%など。50%にするか60%にするかは、その人の良心の問題でもあります。社会的常識に照らし合わせて、自分でルールを定めておけばいいでしょう。

 ついでに言っておくと、タバコはNGです。応接室に置いてある来客用のタバコということならOKですが、それ以外はすべてダメだと思ってください。税務的には、タバコの必要経費性は、ほとんどゼロだと言ってもいい。

 昔は、いつもタバコをくわえていた小説家とかが多かったけど、あの人たちのタバコ代はどうかとなると、私は分かりません。「私はタバコがないと原稿が書けないんだ」と断固主張したら、もしかすると……。

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