人は自分の意見を批判されると、次は批判を避けようとアイデアを取捨選択してしまい、「角の取れた」「まとまった」意見を言うようになる。それでは他人が思いつかないような斬新なアイデアが出にくくなる。だからブレストの場では、どんなアイデアでも「それいいね」と肯定する。その上で「もっとこうしたら面白くなる、効果的になる」という言い方で、議論を積み重ねていく。代案のない批判は、ブレストの最大の敵である。
人から笑われることを恐れない。冗談も歓迎。むしろ笑いを取るつもりで思いついたことを言う。そもそも笑いは、突拍子もない言葉から生まれる。そういう言葉は、斬新なアイデアの原石となる。一見、ムダな意見が飛び交うように見えても、冗談の積み重ねの中から新しいアイデアが出てくることは多い。
ブレストの場では、出てきたアイデアが正しいか有効かなどの判断はまだ必要ない。アイデアとすら言えないものでもよい。粗削りでもいいから、どんどんアイデアを出す。
他人からアイデアが出ると、それに自分の経験や発想を加えることで、そのアイデアが一層新しいものに化けることがある。悪乗りは大歓迎。どんどん人のアイデアに便乗し、自分のものにしていく。
ブレストは、根が生真面目で、前例主義に陥りがちな日本の文化には、なかなか馴染みにくいともいわれる。過去の経験や固定観念、前例などから判断して、ついついマイナス点に目が行きがちなのかもしれない。
何か新しいことを創造するには、「人の意見をまずは肯定する」ことである。
長野真一(ながの・しんいち)
1989年、NHK入局。初任は京都放送局。過去の主な担当番組「堂々日本史」「その時歴史が動いた」「英語でしゃべらナイト」「リトル・チャロシリーズ」「トラッドジャパン」など。
震災直後に、東日本大震災プロジェクトの専任となり、2年間被災地支援の番組やイベントなどを実施する。「東北発☆未来塾」や「復興支援ソング・花は咲く」のプロデュース、「きらり東北の秋」や「ただいま東北」のキャンペーンなどを担当。
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