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» 2014年10月10日 11時00分 UPDATE

ビジネスチームハック:「会社の人間関係、メンドクサイ」――そんなあなたに勧める1冊

ビジネス書をたくさん読んでも、組織内の人間関係のストレスが軽くなるとは限りません。なぜなら一般的なビジネス書は「原因の分析」をしないからです。

[佐々木正悟,Business Media 誠]
タテ社会の力学 『タテ社会の力学』

 読書の秋ということで、ぜひ組織で働く人に読んでほしい本を紹介します。中根千枝さんの『タテ社会の力学』です。

 中根さんの本であれば、だいたいどれを読んでも「組織で働く人間関係のストレスを軽くしてくれる」効果がありますが、その中でもこの本は192ページと短めなのでオススメです。

 いかにも学術書然としためんどうくさそうな外見とタイトルですが、読み出したらあっという間。特に日本的な人間関係で悩みがちな人には、非常によく「効く」1冊です。

コミュニケーションハック本ではダメな理由

 人間関係で悩む人は日本だけでなく、世界中で後を絶ちません。そのため、「対策本」もビジネス書を中心にどしどし刊行され、大ベストセラーも生まれています。しかし、筆者が読む限りなかなか「問題」は解決しません。

 大きな理由の1つとして、それらの本にはほとんど「人間関係がなぜ難しくなるのか?」が書かれておらず、いきなり「笑顔で」とか「アサーティブネス」などの解決策に走ってしまいがちだからです。

 筆者も書いているから分かるのですが、ビジネス書では一般に「原因の分析」よりも「解決策」が求められます。原因をいくら理解したところで、具体的な解決策が分からなければ手のうちようがないというもっともな言い分が強い世界なのです。

 しかし、こと人間関係に関する限り、1つ大事な点を無視しています。人間関係で「悩みがち」な人は、もともとちょっと引っ込み思案であったり、自分が強くでること自体に思い悩んだりしているからこそ、悩んでいるのです。

 彼らがまず知りたいことは「自分を取り巻く現状がどうであるか」。それが分からないから非常に不安になっているのに、その人たちに向かっていきなり「解決策」を提示されても、とてもそこまで行き着きません。

他人が何を考えているのか、ぜんぜん分からない

 筆者自身がそうだから、よく分かります。笑顔もアサーティブも雑談力も、「それができればそうします」としかいいようがないのです。「勇気が足りない」とか「もっと人を好きになれれば」などとも何万回といっていいくらい言われましたが、そういう問題ではないのです。

 人間関係をストレスに感じる人が一番悩んでいる問題は、「人が何を考えているか、ぜんぜん分からない」ということなのです。「自分に何が求められているのかが、さっぱり分からない」ということも問題なのです。

 「そんなの誰だって同じだよ」ともいわれます。しかし、比較的それが簡単に分かる人と、どうしてもそれが理解できない人というのはいるものです。筆者は後者なので、「人が何を考えているかがさっぱり分からない」程度が一般の人よりひどく、その分、組織やチームに身を置くと、何とも言えないストレスを強く感じます。

知ってどうするかは、その人次第

 この何とも言えない心理的な苦痛に満ちた毎日が、中根さんの書籍を読んで以来、一変しました。大事なのは「印象よく人前で振る舞う作法」ではなく、「人が何を考えているかを知ること」だったのです。知るだけで、全然違うのです。

 1つ紹介すると、日本における「忍耐力を要する聞き手の役割」というものがありました。日本人の会話の特徴として、「話者が自分中心の記述に終始するため、聞き手は黙って合いの手を入れる程度のことしかできず、たいへんな忍耐力を要する」と中根さんは指摘します。

 筆者にはこれが非常に不思議で苦痛だったのですが、本書を読んでどうしてそうなるかが分かって以来、苦痛の程度が激減しました。

 一般的に、会話が苦手な人へのアドバイスとして「聞き上手になること」が挙げられます。しかし、これは非常に欧米的というか、少なくとも日本の会話に苦痛を覚える人には役立ちにくいと思うのです。

 現に筆者は「聞き上手」になろうとしてさまざまな本を読んだりしたものの、その結果はいつも「話を聞くのがいよいよ苦痛になる」ばかりでした。筆者と同じような人にはぜひ中根さんの本を読んでほしいと思います。

筆者:佐々木正悟

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 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。

著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。

ブログ「ライフハック心理学」主宰。


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