筆者が学生時代に受講した「オペレーションズリサーチ」を思い出しました。これは、数学的・統計的モデルを用いて、限られた資源によって最高の成果を出すための科学的アプローチです。
例えば、生産性の異なる工場が複数あって、限られた給与の異なる作業員がいる場合に、各工場にそれぞれどの作業員をつけるのが一番利益が生み出せるのかという答えを探るものです。
オペレーションズリサーチは、もともと軍事研究に端を発します。言葉自体が「軍事作戦の検証」という意味ですからね。第二次世界大戦で英軍や米軍が立案した作戦をどのように実行すると、もっと効果的になるのかという研究が始まりなのだそうです。
「どういう戦隊で望めば、被害が少ないか」「航空機を何色に塗ればもっとも撃墜される可能性が低くなるか」などが検証されたといいます。残念ながら、このリサーチは日本攻撃にも利用され、B-29爆撃機の標的命中率が2倍になったといいます。複雑な気分です。
その後、オペレーションズリサーチは民間の生産性向上に使われ、大きな成果を生み出しました。この方法に限らず科学技術のかなり部分が軍事から派生したものです。私たちが日常的に使うガントチャートやPERTなどのプロジェクト管理ツールも、もともとは軍事目的で作られました。戦争は嫌いですが、こうした管理ツールやフレームワークは仕事に欠かせません。考案者には感謝、感謝!
ところで、この執筆時点においても、部屋にはまだ整理されていないダンボール箱が散乱しています。オペレーションズリサーチ手法を用いて引っ越し作業を最適化した結果を期待された読者には申し訳ありません。そして、筆者は強く「もう、当分、引っ越しはしたくない」と思うところです……。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
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